国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-12-15 13:39

(連載)大恐慌を恐れず、新しい日本経済を築け(1)

角田 勝彦  団体役員・元大使
 最近、金融危機による信用収縮の悪循環を端緒として、実体経済のマイナス成長から、1930年代の世界大不況が再現するのではないかとの恐怖が蔓延している。事実、世銀は、12月9日、2009年の世界全体の成長率は前年比0・9%(日米欧はそろってマイナス成長)で、データ入手可能な1970年以降で過去最低になると予測し、「深刻な世界不況に陥る可能性が排除できない」と強い警告を発出した。内閣府も、12月13日、その報告書「世界経済の潮流」で「09年の世界経済の成長率は(08年の見通し2.5%程度から)1%程度に落ち込み、世界同時不況に陥る可能性もある」と発表した。

 なお、世銀は、商品価格ブームは終焉へ向かい、途上国の投資の伸びも09年は3.4%まで急減速すると見ている。また09年の世界貿易(輸出)を前年比2・1%減と1982年以来初めてのマイナスを見込んでいる。中国の輸出も失速し、11月に7年5カ月ぶりで前年同期比マイナスになって内需拡大を目指している。

 今回の金融危機が急拡大した9月以降、主要国が中央銀行による大規模の資金供給や協調利下げなどの金融政策に引き続き、とくに11月の金融サミット(「即効的に内需を刺激する財政政策を活用」と宣言)以降、大規模の財政出動に踏み切ったのにかかわらず、景気後退の底が見えない現状から、この悲観論には裏付けがある。世界貿易の拡大と景気の下支えにつながると期待されていた、WTOのドーハ・ラウンドの大枠合意も、金融サミットでの決意表明にかかわらず、米国とインド・中国の対立などから、そのための年内の閣僚会合開催すら見送られている。
 
 しかし、2007年10月29日付けの本欄への筆者の投稿「警鐘が鳴っている――世界経済の不安な動き」以来、警告を発し続け、「政局より対策」と主張してきた筆者から見ても、この恐怖感の蔓延には、そろそろ歯止めを掛ける必要があると感じられる。ほとんどすべての通貨が対ドルで著しく下落したなか、円が上昇を続けている我が国に於いて、それは、とくに然りである。まさにニューディール政策をとったルーズベルトが言ったとおり、「 われわれが恐れるべき唯一のことは、恐怖それ自体」である。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム