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2008-12-03 08:02

麻生は「旗は降ろさず路線転換」が明白に

杉浦 正章  政治評論家
 顔だけはすごみのある自民党総務会長・笹川尭が概算要求基準(シーリング)の凍結を首相・麻生太郎に呑ませる条件に「総務会として麻生内閣を全面的に支持する代わりに」と発言したことには驚いた。政権の弱みにつけ込んだ“どう喝”もよいところだが、これで「シーリング凍結積極財政派」と小泉政権以来の「改革維持派」の対立が一挙に表面化したことになる。麻生は直ちに「シーリングは維持」と否定的に反応したが、さすがに政治家、「景気には機動的対応する」と付け加えた。メディアは対立を大げさに取り上げるが、方向は見えている。それは「旗は降ろさず路線転換」の一語に尽きる。

 「公共事業費の3%削減や、社会保障費の伸びを年2200億円抑制する方針を、今後3年間にわたり凍結するよう求める」という方針を決定した2日の総務会をリードしたのは、幹事長・細田博之。最初の発言から締めくくりまで細田ペースだ。これは何を意味するかというと、事前に空気を察知していた細田が、自らが強い発言をして、総務らの麻生政権批判を封ずる効果を狙ったのだ。会議運営の高等テクニックだ。麻生がシーリング維持の反応をしたのは、言うまでもなく最近、きな臭い動きを見せている中川秀直ら小泉改革死守グループの存在と財務省対策。離党や新党結成に含みを持たせている元行政改革相・渡辺喜美らを先兵として、メディアを意識して何をするか分からないグループの存在だ。また麻生が総務省寄りになって、不満がうっ積している財務省にも、気を遣わねばならない。だから7月に閣議決定したシーリング維持の方針は表向き維持せざるを得ないのだ。

 しかし麻生本人はもともと積極財政論者である。日本経済を「全治3年」と見て赤字国債発行も辞さない姿勢を示している。麻生は本音部分では、小泉改革の骨太方針を維持していてはとても景気回復は実現しない、という立場に違いない。それでは麻生の言う景気への機動的対応とは何か。麻生は2日もシーリング維持発言とは裏腹に、(1)1兆円規模の新たな交付金「地域活力基盤創造交付金(仮称)」を創設し、(2)雇用対策などとして3年間で10兆円の予算特別枠を設置する、など矢継ぎ早の積極財政を展開している。

 シーリングと折り合いがつかなければ、来年度予算でなく、2次補正で実現すれば良いわけだ。補正予算にシーリングはない。社会保障費の自然増抑制の方針も、事実上見直すことになろう。朝日新聞が3日の社説で「財政節度を守りつつ、どう経済を下支えするか。求心力が大きく揺らぎ始めた麻生政権に、まともなかじ取りができるのか」と“心配”しているが、麻生の回答は「シーリングの旗は降ろさず、事実上小泉路線の転換を行う」というところが本心だ。100年に一度の経済危機で財政出動は世界的な潮流になっている。予算をめぐるこの程度の“政治”はまさに麻生の得意分野であるし、自民党が毎年繰り返していることだ。
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