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2008-11-25 08:11

野党・マスコミとも本筋の議論をせよ

杉浦 正章  政治評論家
 首相・麻生太郎に対する批判が高まっているが、民主党代表・小沢一郎による「ちんぴら」発言が象徴するように、マスコミも含め批判がいささか本題からずれている。麻生が歴代首相、とりわけ前元二人の首相に比較して、金融危機対策などスピードを求められる本筋政治の分野で「一国の首相として情けない」(小沢)状態とは思えない。むしろ景気・経済対策などは優れていると思う。自民党内若手からも批判が出ているが、麻生を降ろしたら後がなく、自らの当落にかかわることを知らない。麻生批判の構図を分析すると、本題でなく、傍題での批判が多すぎる。まず朝日新聞を筆頭に「早期解散派」のマスコミが、あらゆる事象を首相批判に結びつけることから始まっている。「漢字の誤読」「ホテルのバー活用」「医師非常識発言などの失言」をあげつらい、記事にする。

 民放などがこれに飛びつき、オーバーな表現で首相をこき下ろす。しかしこれら一連の発言や行動が、国家の安全保障に始まって、折からの金融危機、中小企業対策など経済施策など首相が対応すべき問題と、どう関わり合うのだろうか。本筋を読まずに、軽佻浮薄な傍題での批判が多すぎないか。本筋批判は確かにある。それは本筋を政局に結びつける思惑で出ている。解散先送り、定額給付金など2次補正提出時期がその中心だ。しかし解散先送りは、自民党総裁としての麻生の立場から言えば、地滑り的大敗が予知される中で、よく急旋回ができたということになる。朝日の断定したように「10月26日投票」を断行していれば、いまごろ自民党政権はないだろう。負ける選挙に突っ込むような総裁を、自民党員として信用できるか、を問うべきだろう。各種世論調査でも、金融危機で解散どころではないという結果が、歴然と出ているではないか。野党の思惑をそのまま「世論」へと醸成する一部マスコミに問題はないか。

 小沢はまだ「1月解散になる」と言い続けているが、ここまでくると「死んでもラッパを離さなかった」木口小平喇叭卒ではないか。“政局病”も病膏肓に入った感じだ。定額給付金批判は民主党と一部マスコミの定番メニューだが、庶民の視点を忘れている。世論調査も、政策の質を問う質問にネガティブな反応が出ているだけであり、物価高騰に悩む国民の真意は、早期支給実施にあるのが本筋だ。小沢は「ばらまき」と批判するが、民主党のマニフェストは額から言ってもこの程度のばらまきではない。しかも恒常的なばらまきだ。お株を奪われて批判しているのではなさけない。「元祖ばらまき」が「本家ばらまき」に先を越されて、歯ぎしりしている構図だ。2次補正を臨時国会に提出しないから年末の中小企業対策が出来ないというが、金融機能強化法改正案の採決を政局に絡めて遅らせているのはどの党か。年末の中小企業融資ができなくて倒産続出したら、責任は民主党の強硬路線への転換にあるのではないか。定額給付が年度内に実施されるなら、通常国会冒頭処理で全く問題はない。

 要するに、野党もマスコミももう少し大人の論議をするべきだ。一国の首相を「チンピラの言いがかりみたいだな」と批判して、自らの政治のレベルを低めてはならない。就任後2か月で「だめ出し」をするのは、早計過ぎないか。麻生も発言が軽すぎる。直感で物を言いすぎる。トップダウンするなら、それなりの根回しをしてから行うのは常識だ。そしていったん決断したらぶれないことだ。小沢に対して党首討論を呼びかけたが、小沢はこれに堂々と応じて国会での論戦を通じて雌雄を決したらいい。政治を「ちんぴら」批判レベルから昇華させるべきだ。党首討論制度を創設したのは小沢自身であり、これに応じないのは、心理的トラウマでもあるのか。世界中の政治家が金融危機対策で血眼になっているときに、のんびりと小沢流政局のペースで解散などしていられるときではない。
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