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2008-11-18 16:08

(連載)日本は内需拡大の成長戦略を打ち出せ(2)

角田 勝彦  団体役員・元大使
 実はつとに、1986年の前川リポートは、国民生活向上と経常収支不均衡是正のための内需拡大を主張した。金融の超緩和と公共投資による内需拡大策がバブルを生んだ弊害はあったが、マクロ経済学の公式(経済成長率=民間消費の寄与度+民間投資の寄与度+公的需要の寄与度+純輸出の寄与度)からしても、その基本認識は正しい。とくに総需要の6割を占める民間消費(住宅含む)が重要である。公的需要については、11年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化するという財政再建目標もあり、財政的に余力がない現状から、なおさらである。
 
 これは、国際的要望でもある。2008年2月の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題をきっかけに世界経済が失速するリスクを回避するため、「自力で成長力を高める努力をする」ことを求めた。日本経済は、たとえば07年第3四半期GDP成長への寄与率で見ると、家計部門(個人消費、住宅投資)がマイナス0.2%と押し下げ要因だったのに対し、企業部門(設備投資、純輸出)の伸びがプラス0.9%と高く、企業部門で成長を支える「片翼飛行」だったのである。

 この意味で10月30日政府が決定した事業規模約27兆円(実質的な財政支出となる「真水」は約5兆円)の追加経済対策「生活対策」は、内需拡大に向けた家計支援や金融市場の安定化、地方の活性化支援などを打ち出しており、方向性としては正しい。問題は、定額給付金についてバラマキとの非難が行われているように、経済成長戦略との整合性などが明らかでないことである。もっと長期的視点の明示が必要である。

 私見ではあるが、内需拡大の突破口は「健康・福祉」が望ましい。健康はとくに老人にとって最大の関心事である。1500兆円とも言われた個人金融資産の裏付けもある。さらに、この分野で再生医療(iPS細胞利用)など「革新的技術」が創造されれば内需拡大のみならず新しい外需も創造しよう。花見酒の経済になる危険は少ない。これをモデルとして、環境・エネルギーなどが続こう。日本が世界の最先端にある環境対策製品(たとえば太陽電池、海水淡水化装置、ハイブリッド車、電気自動車)や情報技術などの新しい技術や製品が活用されていけば、日本経済の将来は明るいものがある。(おわり)
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