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2008-11-05 16:08

(連載)自治体破綻への警鐘(1)

森 浩晴  団体職員・大学講師
 かつて99市町村あった岐阜県下の自治体(自治体とは、47都道府県・1821市町村・23特別区の地方公共団体を指す)は、平成15年以降、合併促進の波に乗り、現在42市町村にまで収斂しています。民間企業で合併や廃業が進む中で、地方公共団体においても、いわばリストラが進んでいるのです。民間企業の場合は、合併や廃業によって一定の効果を上げることが可能ですが、地方公共団体に関しては、同じ方法論が該当するのでありましょうか。岐阜県下42市町村の過去10年の財政を分析してみますと、以下のとおりです。

 総務省は、地方財政の破綻を防ぐために、(1)実質赤字比率(普通会計の実質収支を標準財政規模で除したもの)、(2)実質公債費比率(普通会計・企業会計の地方債元利償還額を標準財政規模で除したもの)、(3)連結実質赤字比率(普通会計収支に企業会計収支を合算したものを標準財政規模で除したもの)、(4)将来負担比率(借金総額の指標)という4つの財政指標を指し示しています。

 これらの難解な指標を住民レベルで再計算しようとしても、ネットで公開されている「決算状況(普通会計)」から読み取りができる要素数値には、限りがあります。逆言すれば、それ以外の数値は、未だに公表されておらず、財政当局の一部にしかつかめない仕組みになっているのです。平成18年、 財政再建団体に転落した夕張市では、第3セクターを始めとする特別会計の借金(地方債残高)が、市という行政本体を潰してしまった経緯があります。これからは、企業会計を始めとした特別会計なる「暗黒大陸」に灯明していく必要がありましょう。

 私が分析したところによれば、連結実質赤字比率の全国ワースト30自治体の側には、この夕張市が含まれています。しかし、逆に言うと、総務省指標で財政再生に指定された(つまり実質赤字比率が-20%以下である)のは、夕張市だけなのです。それ以外の全国ワースト地方公共団体や岐阜県下42市町村は、寧ろ「健全な数値」となっているのです。

 全国や岐阜県下の首長が、その財政に危機感を募らせている一方、総務省指標が「これらの自治体は健全である」というのは、誠に奇異な現象であります。従って、現在の総務省指標が果たして本当に適確に地方公共団体・財政内容を指し示しているかどうか、は大変微妙なところと思料されるのです。(つづく)
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