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2008-10-20 07:54

総選挙になれば、「霞ヶ関症候群」が自民党を直撃する

杉浦 正章  政治評論家
 11月末に総選挙となった場合、やはり最大の争点は「霞ヶ関症候群」となる気配が濃厚である。首相・麻生太郎が必死に党首決戦、景気対策、給油問題に国民の目を向けようとしているが、いまひとつ盛り上がらないのだ。従って、与党が霞ヶ関の官僚によって結果的に大ダメージを受けるという構図のまま、総選挙突入の方向にある。民主党が補正予算に賛成し、給油法案の成立を黙認しようとする背景には、あえて不利な争点を避けて、「霞ヶ関症候群」を温存しようとする思惑がある。加えて総裁選挙のころから「主敵は小沢一郎」としてきた麻生の党首決戦戦略も、小沢が代表質問ではぐらかし、党首討論も渋り、まともに対応しないため、マスコミもはやし立てず、不発の状況が続いている。

 民主党のマルチ商法業者との癒着問題も、小沢の素早い対応でどうやら一議員の問題に絞られて、決定打にはなりそうもない。国会対策も、民主党の方がどうみても一枚上手の様相を呈している。「消えた年金」が終わらないうちに、「消した年金が」出てくる。大小の無駄遣いが、次から次に白日の下にさらされる。後期高齢者医療制度の抜本改革も、担当大臣の「留任運動成功」という邪道とも言える対応だけが目立った形だ。同制度の「抜本改革」を打ち出した舛添要一と、これに呼応した麻生は、厚労省官僚と族議員の猛反発を受けて、あえなく対応をうやむやにしてしまった。民主党など野党が提出した後期高齢者医療制度廃止法案への期待がよみがえりつつある現状だ。給油問題にしても、麻生が「給油から手引く選択はない」と、民主党側を論議に巻き込もうとしても、同党の「新テロ特措法成立黙認」の対応は議論の広がりをもたらさず、とても決定打にはなりそうもない。

 定額減税など“選挙対策”を盛り込むことになる第2次補正も、民主党幹事長・鳩山由紀夫がいみじくも「2次補正は選挙後に民主党政権の下でやる」と19日発言したように、まさに政治的には「絵に描いたもち」の構図となりつつある。最後の頼みの綱は、首相候補としての人気が世論調査で常に麻生が小沢の倍となっていることだ。内閣支持率が10%台にまで落ち込んだ福田康夫の下での選挙と比べれば、麻生の方が格段の危機対応型の首相だが、その麻生の力を持ってしても「霞ヶ関症候群」をはねのける力にはなりそうもない。麻生政治が定着するまでには時間がかかるし、内閣支持率もじり貧状態になってゆくだろう。総選挙では麻生人気は上滑りする可能性がある。報道機関の世論調査もこうした傾向を裏付けている。20日付けの毎日新聞では「勝って欲しい政党」が自民党から民主党に再逆転している。

 したがって国民の目というか、怒りの構図というか、総選挙での選択の基準は厚労省、社会保険庁に象徴される霞ヶ関官僚の巻き起こした失政、怠慢、汚職、無駄遣いなどに絞られる傾向にある。そしてそうした官僚の体質を野放しにしてきた自民党政権に批判の矢が向けられる方向だ。すべての政治を自民党族議員と官僚によるまぎれもない“癒着”で決めてきた、積年の病弊が問われようとしているのである。国民は本能的に自民党政権では霞ヶ関改革はできないと判断しているに違いない。麻生にとっての最後の手段は、解散を大幅に先延ばしすることだが、幹事長や国対委員長の11月末投開票発言を黙認している以上、流れにこれ以上さおさすつもりはないのかも知れない。
 
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