国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-09-27 12:53

(連載)大統領選挙にブラッドレー現象はあるか(2)

梨絵サンストロム  ジャーナリスト
 過去10年間にブラッドレー的影響は激減しているが、オバマが大統領選挙の候補に確定してから、メディアはまた人種差別、偏見を取り上げるようになった。人種差別問題はもっとも危険な放射能で、誰も触れたがらない。ことにオバマと対するマケイン側では、黒人問題を徹底した禁句にしている。現在アメリカでは黒人を黒人と呼ぶことは出来ず、正式な呼び名が「アフリカ系アメリカ人(African American)」という長い代名詞になっている。オバマは去る7月「マケイン側には、私が変な名前であり、ドル紙幣に印刷されている大統領たちとは違った顔をしている、ことで投票しないという人たちがいる」と、自分で人種問題を口にして、マケイン側を挑発し、禁句を破らせようとした。

 マケイン側は、オバマが自分で人種問題を持ち出しても、こちらはその手に乗らない、と無視してきた。マケインが人種差別など考えてもいない理由のひとつは、16年前マケインと夫人はバングラディッシュの病気で瀕死の状態であった黒人の乳児を連れ帰り、幼女にして育てている。オバマ側やアメリカのメディアは、マケインの年齢を取り上げ、「惚け老人」などと揶揄するが、オバマが黒人であることに関して、たとえどのような些細なことでも口にしようものなら、マケインは袋叩きに遭い、選挙は直ちに負けを見るだろう。オバマの最大の武器は、ニューヨーク・タイムズを筆頭に80パーセントは狂的オバマ贔屓のアメリカメディアである。

 そのメディアが、最近になってブラッドレー現象を問題にして、騒ぎ始めた。致命的な経済問題、5年来の失業率、株式市場最悪の沈滞、などオバマにとっては天与の条件がありながら、オバマがマケインを振り切れないでいる理由である。オバマは数点上昇してはいるが、その怒涛のような人気や天才的弁舌にもかかわらず、マケインを大差で引き離せないでいる。メディアはその理由をマケインのメリットとは認めず、45歳以上のアメリカ人が黒人に対して偏見を持っている所為だとする。

 最近のAP-yahooの共同調査によると、オバマは6%以上マケインを引き離さない限り、勝利は無理としている。オバマの属する民主党でさえ、白人党員の3分の1は黒人に対して否定的な偏見を持っている、という結果が出ている。人種的偏見は、南部以外に住む大学卒以上の学歴を持アメリカ人には少ないが、労働者階級にはまだ根強い偏見が見られる。彼らの偏見は「黒人は怠け者、無責任、暴力的」が大きな理由である。オバマは、チェンジをスローガンにアメリカを変えることを誓っているが、彼が変えることのできない彼自身の皮膚の色に対する偏見は、1ヵ月後の選挙にどのような影響をもたらすであろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム