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2008-09-19 07:53

官僚不祥事で「麻生効果」は相殺 

杉浦正章  政治評論家
 事故米事件といい、年金記録改ざん事件といい、「腐りきった」という表現しかない日本の官僚機構の腐敗・責任放棄の構造だが、それがやはり“予定どおり”総選挙を直撃しそうな空気となってきた。自民党は劇場型総裁選挙でムード盛り上げに懸命だが、官僚腐敗、金融危機など山積する緊急課題は、かえって自民党の“演出”に白々しさを感じさせている。劇場型総裁選挙は、わずか10日で投票前に事実上幕を閉じた。「麻生人気」は上滑りするかもしれない。官僚の制度疲労は、もう「またか」というレベルどころではない。消えた年金に端を発した年金不祥事は、保険料の徴収率を上げるために過去にさかのぼって標準報酬月額を引き下げる、という驚くべき国民への「裏切り行為」に発展した。全国の社会保険事務所で横行していた事実は、全く度し難く、「官僚の点数稼ぎあって、国民なし」のまさに犯罪行為だ。

 厚労相・舛添要一は「組織ぐるみであった」ことを認め、6万8千件の規模だという。しかしこの数字もあやふやで、恐らく実態は数10万のレベルに達している模様だ。解雇処分などは生ぬるい。当然刑事告発に値する問題だ。加えて事務次官・白須敏朗辞任問題に発展した、農水省の事故米事件がある。事前に立ち入り検査を通知してから検査に赴くという“習慣”は、消費者不在の癒着構造以外の何物でもない。次官の「責任は一義的には企業にある」発言が、現在の官僚の責任回避の意識水準を如実に物語っている。「じたばたしていない」発言の農水相・大田誠一発言の問題掌握力のなさとも相まって、国民の不満を増幅させた。まさか麻生太郎は内閣改造に当たって、この大田を留任させることだけはないだろうが。

 官房長官・町村信孝も打ち消しに懸命だが、ピントが外れている。舛添の組織ぐるみ発言を「それが組織的犯罪であったかどうかは分からない」と打ち消している。担当相の発言をすぐに官房長官が否定するという、異常な事態に気づいていない。おそらく農水次官の辞任も官邸の“圧力”を感じてのものに違いないが、ここまで発展すると“レームダック首相”を含めた政府全体の責任問題である事は否めないのではないか。これらの問題だけで解散・総選挙をするに値する。折から政府自民党は、総裁選挙のお祭り騒ぎで国民の視線が政府を発生源とする不祥事からそれはじめたと判断し、何が何でも早期解散に逃げ込もうとしている。その中心が選対委員長・古賀誠で、「補正成立を待たず、10月26日投票」説の発生源だ。

 朝日新聞はこれに完全に乗って「26日投票」に踏み切っている。しかし、世界を覆う金融不安の中で、緊急景気対策のための補正予算案を放り出して、解散に突き進む政治姿勢が、国民の共感を得られるだろうか。トリッキーな国会対策を続けている民主党だが、今回の話し合い解散提案だけは、うなずけるものがある。にもかかわらず町村はこれを「党利党略」とだけ判断して「今まで何度もその手の話で過去1年、裏切られ続けてきた」と拒否した。しかしさすがに麻生は、速やかな景気対策が必要との立場から、補正予算案を成立させた上での解散を考慮しており、町村・古賀路線に完全には乗っていない。良識派与謝野馨も、補正成立後の解散論だ。いずれにしても、せっかく生じた「麻生効果」は、またまた官僚不祥事で相殺されようとしている。それが大局から見た政治だ。総選挙の結果は全く予断を許さない。
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