国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-09-03 11:42

(連載)地球規模課題で日本は欧米との協力を重層化せよ(5)

古川勝久  (独) 科学技術振興機構社会技術研究開発センター・フェロー
 この点、イギリスの対米外交は巧妙である。米英同盟においては、米側の大統領が誰になろうとも、イギリス政府はすぐに緊密な協力関係を打ち立ててきた。その主な理由の一つとして、イギリスもこれらのグローバルな課題、しかも米国が戦略的重要課題とみなす課題に対して、積極的に関与してきたことが挙げられよう。しかも、そのために関係省庁が一致協力しあいながら、オール・イングランドの態勢で取り組んできた。今や、米国が超党派で最重要戦略課題とみなす数多くの課題について、イギリスは不可欠なパートナーとしてみなされている。米大統領は地球規模課題や欧州や中東、アフリカなどの問題に関して、まずは英国首相に相談するといわれる所以である。日本の首相は同じように相談を受けたことがどれほどあるのであろうか?

 米側が重要戦略課題とみなす地球規模課題についても、日本がより積極的に関与してゆくことが望まれる。日米同盟が対処する「政策領域の幅」をより広げて、日米協力を網の目のように重層化してゆく。このような取り組みがより一層進めば、米側で政権が交代する度に、日本が一喜一憂するような状況もやがて消失してゆくのではないだろうか。重要なポイントは、米国が数多くの「最重要戦略課題」に対処してゆく上で、日本が「不可欠なグローバル・パートナー」としてみなされるようになることであろう。

 ただし、そのような取り組みを「米国のためだけ」に行うべきでは全くない。あくまでも、日本の国益と価値観を地球規模で包括的に見据えた上で、取り組むことが重要であろう。日本自らの判断で、重要なグローバル・アジェンダを設定し、そこに米国をはじめとする国際社会の協力を引きずり込む。そのために積極的なリーダーシップを発揮する必要がある。いわば「逆外圧」を欧米諸国に対して積極的に課してゆくべきだ。最後に、「アフガニスタンやイラクなど、欧米と協力を進めてゆけば、必ずアジア地域で日本にメリットが跳ね返ってくる」という、ある欧州駐在自衛隊武官の言葉を紹介しておきたい。日本の論壇や国会においても、グローバルな長期戦略を見据えた議論をぜひ期待したい。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム