国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-09-02 17:49

(連載)地球規模課題で日本は欧米との協力を重層化せよ(4)

古川勝久  (独) 科学技術振興機構社会技術研究開発センター・フェロー
 さらに、同様のポイントは、日米同盟についても指摘されうる。米国との間でも、グローバルな課題に対する日米協力を日本はより一層推進してゆくべきである。1990年代半ばの日米安保宣言、日米防衛ガイドライン改定では、地球規模の日米協力の重要性が明確に指摘されていたが、今日、この分野における日米協力は、日本防衛や周辺事態における日米協力と比較すると、相対的に希薄な感が否めない。日本では、米国の政権が交代する度に、「新政権は親日路線を維持するか?」とやきもきしがちである。米政権内において、「知日派が主要ポストにいるかどうか」、「新政権の対日政策はどうなるか」など、米国の対日政策ばかりが注目されがちである。

 しかし、残念ながら、米国にとって、対日政策は必ずしも最重要課題ではない。代わりに、米国の安保戦略を見てみると、最重要課題の中には、テロ問題、エネルギー問題、大量破壊兵器拡散、感染症対策、貧困対策、民主化普及など、グローバルな規模の課題が数多く見受けられる。日本はこれらの問題に対処してゆく上で重要な同盟国として明確に位置づけられてはいるが、中国問題などを除けば、必ずしも「最重要」と考えられているわけではない。むしろ米国と欧州諸国との協力のほうが目立っている。

 これらの地球規模課題に対処してゆく上では、日本の外務省や防衛省だけでは必要な専門知識や専門家が圧倒的に不足しており、とても対応しきれない。これらの問題への対処にあたっては、厚労省、国交省、海上保安庁、文科省、経産省、財務省、警察庁など、様々な省庁が関与しなければならない。しかし、これらの省庁の数多くが、外交にも安保にも関心がないのが実情であり、これは日本外交の更なる進展に大きな障害となっている。今後、日米同盟にこれらの「新たなステイクホルダー」たる関係省庁をいかに統合しうるのか。この点こそが、地球規模の日本の協力を推進してゆく上で試金石となるように思われる。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム