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2008-09-02 09:29

福田辞任:杉浦正章氏の分析に敬服、賛同する

苦瀬雅仁  大学教授
 本日付けの杉浦正章氏の的確な分析「福田辞任で攻守逆転の与野党構図」に敬服し、賛同する。杉浦氏もご指摘の種々の状況を考えれば、政治の混乱・空白を最小限にするためにも、また自民党のためにも、この時期の退陣表明は、賢明な決断であったと考える。突然の辞任であったし、予想しがたかったものであることも事実であるが、しかし、それでは総理の辞任と言うものは、あらかじめ予告してするべきものであるのかといえば、そんなことは全くないのは自明であろう。例えば、総選挙を行って負ければ退陣と言うのは、予想される退陣ではあるが、低支持率状況の続く福田内閣で、負けるとわかっている選挙を行うぐらいであれば、それとは違うよりよい時期を選ぶのが、与党のみならず、国家・国民のためでもあるといってよいだろう。

 あいかわらずのマスコミの論調(政権に対して過剰に批判的で、芸能新聞的あるいはスポーツ新聞的に政治報道を行う)の中で、それなりの成果をあげ、現在の政治環境の中でよく努力してきた福田政権であるにもかかわらず、支持率は低迷してきたが、この支持率の低い状況は、まともなよい政治行動を続けることによって回復することは(今のマスコミの姿勢を見る限り)ないであろう。他方臨時国会においては、いよいよ迫る衆議院解散総選挙をにらみつつ、再選される小沢党首率いる民主党は(日銀総裁、給油問題などと同様に)自らの政権戦略を最優先して、政策的意味とは別に、強烈な反対路線をとり続けることが予想された。それは支持率の低い福田内閣を退陣に追い込む可能性をはらむものであった。同時に早期の解散総選挙を望む公明党の臨時国会における支援もあまり期待できない状況とあれば、野垂れ死にの総辞職よりは、今の時点での退陣表明のほうがより適切な退陣だとの判断は納得できるものである。

 思惑通りに行くかどうか予断を許さないとはいうものの、後継総裁選挙は(スポーツ報道としても面白いので)マスコミは大きく報道するであろうし、国民の関心も高まるであろう。それに対して小沢現党首以外に候補者のいない民主党の総裁選挙は関心ももたれず、すでに古い顔となった小沢党首は、自民党新党首との比較において、明らかに魅力が薄い印象となるであろう。そして自民党新党首が総理となれば、少なくとも当初の内閣支持率はある程度の高さになるであろう。そうなれば、公明党が再び与党としてより強く政権を支える色彩を強めることは予想できる。福田総理に批判されるべき点もあったとは思うが、この一年の功績・努力は大いに評価されるべきである。そしてこの最後の熟慮の退陣時期の選択は、大きく評価されるべきであろう。

 マスコミが、この退陣を単純に「無責任」と批判するのは、批判的報道の方が読者(視聴者)受けが良く、それがマスコミの使命と考えられる傾向が日本にあるからであり、やむを得ないところもあるが、十分な分析を示し、上述のような種々の要素から見て、福田首相の退陣表明は、合理性のある熟慮された決断であるということを明らかにした杉浦氏の解説には、改めて敬意を表するものである。
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