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2008-08-25 08:21

「和戦両面」の陽動作戦に出た麻生

杉浦正章  政治評論家
 「福田・麻生密約説」は噴飯ものだが、「ポスト福田」の動きは加速している。自民党幹事長・麻生太郎の応援団から「福田批判」や「麻生待望論」が次々に打ち出されるに至っている。問題はこれらの発言が独自行動か、麻生が絡んだ仕掛けなのかだが、明らかに絡んでいるようだ。麻生は、福田が政権を投げ出した事態に備えて陽動作戦に出たとみるべきだろう。

 「麻生応援団」はまず前経済産業相・甘利明が18日「次の指導者を担ぐ事態が来たら、麻生さんも私も党総裁選で戦わないといけないという考え方は同じだ」と述べ、ポスト福田への第一声を上げた。次いで昨年9月の党総裁選で麻生を支持した「真・保守政策研究会」の会長で元政調会長の中川昭一が23日「バブル崩壊で世界経済を不安定にした米国にものを言わず、国内では石油、食糧の高騰で何もしない。何もしていないのは政治の無責任と言わざるを得ない。このままでは日本が沈没しかねない。何も発信しない総理では駄目だ」と福田を完全否定する発言をした。

 通常なら「政局」のゴングが鳴らされたことになるが、問題は、これが発言者の単独行動か、麻生本人と打ち合わせたうえでの発言か、ということである。中川の場合は証拠がないが、甘利の場合は麻生とじっくり話し合ったうえの発言である。本人が認めている。甘利は発言に先立って麻生と「ポスト福田」について綿密に打ち合わせている。この席で麻生は福田との間で禅譲密約があったとされる“風聞”について、「ありえない」と否定するとともに、「これから先、何が起きるか分からないし、もし何かあっても総裁選は必ずすべきだ」と述べている。甘利も「ちゃんと戦って、党内の評価にさらされる方がよい」と応じて、総裁選挙の手続きを経て対応することで一致している。
 
 そして今後の対応について(1)現在の福田・麻生体制で支持率が上がり、総選挙に突入することが、最善である、(2)しかし支持率が20%を切るような場合には、党内から体制立て直しの声が出る、(3)その場合のコンセンサスは麻生である、との認識で一致している。要するに麻生は、当面和戦両様の構えでいく姿勢を固めたと言える。したがって当分麻生は幹事長として福田を支えながら、福田が支持率低下や臨時国会の行き詰まりで政権を投げ出すような場合には、直ちに総裁選挙に向けて戦うという姿勢である。
 
 おそらく中川昭一も、同様の話を麻生とした上での発言だろう。それにしても、福田を「何もしない総理」とまでこき下ろす発言は、麻生支持派が福田に対して「退陣圧力」を今後もかけ続けることを意味している。問題は、昨年の総裁選挙で自派以外の党内全派閥の支持が福田に回ったことが物語るように、麻生の党内基盤は脆弱だ。下手な動きは、党内の総反発を浴びかねない。ただ麻生は、公明党との関係が強く、今後公明党からも「福田降ろし」の圧力が出れば、間接的な援軍になる。
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