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2008-07-23 09:23

(連載)民主党政権は槿花一朝の夢(2)

杉浦正章  政治評論家
 大きな政策転換は、小泉純一郎が実施した郵政民営化の見直しである。小沢一郎は、集票マシンである全国郵便局長会(会員約2万人)の会長・浦野修との会談で、郵政民営化の抜本的見直しの見返りに、同局長会が民主党への選挙協力を進めるとの約束を取り付けた。つぎに外交・防衛面では、自衛隊のイラクからの撤退と、小沢が憲法違反とする自衛隊によるインド洋での給油活動中止に踏み切る。外交関係の基軸は当然ながら米国から遠ざかる流れとなろう。逆に、小沢人脈を活用した対中関係に重心が移行するだろう。小沢の持論である「国連中心の外交」も展開されよう。小沢にしてみれば、公約して政権を獲得したのだから、実施に移さざるを得ない政策ばかりであり、避けては通れない。

 しかし、これらの施策を実施に移すには、前官房長官・与謝野馨の試算によると30兆円の財源が必要になる。公約では、これを民主党は消費税抜きで、しかも“節約”で賄わなければならない。与謝野が「デタラメ」と言うゆえんである。結局、民主党は「福祉目的に限る」などとして、消費税導入に踏み切らざるを得まい。これは重大な公約違反となる。郵政見直しも、国民生活に直結しているだけに、二転三転は社会的な大混乱を発生させるだろう。一方対米関係も、米大統領がマケインになっても、オバマになっても、アフガニスタン重視は変わらない。日本には一層の協力を求める方向だ。これを給油中止が直撃する。米国との外交・安保関係は、戦後まれに見るほど悪化するだろう。NATOは自衛隊地上部隊の参加を求めており、国際的な孤立を招くことにもなる。

 また、政府機関が小沢の言うとおりに動くかどうかの問題もある。行政改革相・渡辺喜美は、民主党政権となった場合「官僚のサボタージュが起きる」と警告している。いまどき自民党への節を守ってサボタージュするほど根性のある官僚がいるかは疑問だが、政権が早期に倒れると見れば、あり得ることだ。とりわけ財務、厚労、防衛の各省に民主党は“敵”を作っている。こうして民主党政権は、半年を待たずに行きづまりの兆候を見せるのである。まさに槿花一朝の夢である。(おわり)
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