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2008-07-20 11:53

(連載)ケナンの米占領政策批判(2)

奈須田敬  並木書房取締役会長・月刊「ざっくばらん」編集長
 まず農地改革について、それ自身建設的で望ましいものであったが、日本の農耕地の約3分の1を対象としたもので、日本政府にこの広大な土地を再分配のため購入させるというものであった。しかし、購入された土地のわずか7分の1だけが、当時の時点までに売却されたにすぎなかった。結果的には、農地所有関係に大きな混乱と不安をもたらしただけと言われても仕方のないものであった。

 工業面についてて、SCAPはほとんど異常なほどの熱心さで、トラスト(企業合同)解体の理念を抱いていた。すでに、ワシントンの司法省反トラスト局に対して強力な意見具申が行われていた。最も強大な企業のいくつかを含めて、およそ260の企業が、「経済力の不当集中」と指定された。これらの企業の株式は、多くの場合、SCAPの指令に基づいて政府に接収され、理屈上は、再売却されることになっていたが、いったい誰に再売却されるのかは、はっきりしていなかった。「その間、企業は不安な状態のままなお存続し、その不安状態が経営者のイニシャティブと自信に深刻な打撃を与えずにはおかなかった。これらの措置がとられる基となったイデオロギー的な観念は、『資本主義的独占』の害悪に関するソビエトの観念と全く似ており、こうした措置そのものは、日本の将来の共産化に関心を持つものにだけ高く評価されるものであった。日本の復興に彼ら(SCAP)がどれだけの関心を持っていたかはあまり明らかではなかった」と、ケナンは述べている。

 いみじくもケナンが指摘したように、「改革」という名の「資本主義廃絶」政策が「自由」「民主」「人権」の名を借りて堂々と罷り通っていたのである。それをSCAPの中で推進していたのが、マッカーサー麾下の民政局(ホイットニー局長、少将)であり、経済科学局(マーカット局長、少将)であったが、かれらの「やり口」をにがにがしげに見守るだけでなく、ひそかに反撃の綱をひろげていたのが、同じマッカーサー元帥の腹心、情報局(ウィロビー少将、局長)であった。ケナンの占領政策批判はまだつづく。日本国民の知らないところで、日本の歴史は変わりつつあったのである。(おわり)
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