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2008-07-16 08:04

支持率低迷は福田の素質が問題

杉浦正章  政治評論家
 首相番の問いに「支持率はもういい」と苛立ちの極みという表情を首相・福田康夫が見せた。7月14日のことである。無理もない。政権浮揚の頼みの綱であった「サミット効果」がほとんど支持率に反映しなかったからだ。逆に「サミットを評価しない」という反応が過半数を超えている。公平に見て、一生懸命やっているように見えるのに、どうしてこう首相の人気が低迷し続けるのだろうか。サミット直後に行われた世論調査は、各社ほぼ共通する結果が出ている。内閣支持率は、朝日新聞が24%で1ポイント増、読売新聞27%で1.5ポイント増、共同通信が26・8%で1.8ポイント増である。若干増加しても誤差の範囲である。これに加えて、サミットの評価では、朝日が「指導力発揮せず」60%、読売「評価しない」52%、共同「指導力を評価しない」51.4%といずれも過半数が評価していない。

 要するに何をやっても支持率が向上しないのである。その原因を探れば、どうしても首相自身の“素質”にたどり着かざるを得ない。会社を見回して、どの会社にも存在する“普通の人“をイメージすると分かりやすい。仕事は普通にこなすが、今ひとつぱっとしない人物である。その“普通の人“が“社長”になってしまったのではないか。優秀な指導者にみられる「ひらめき」、「優れた直感力」が全く伝わって来ないのである。石油価格の高騰で漁船が一斉休業しようが、スーパーで主婦が10円単位の安売りに殺到しようが、首相からの発信はほとんどなにも感じられないまま、早々と夏期休暇入り。後期高齢者医療制度で年寄りが悲憤慷慨(こうがい)しても、官僚の敷いた路線を走って離脱しようとしない。

 歴代首相をみれば優秀な政治家は反応が素早い。1973年の石油危機で狂乱物価に直面した田中角栄は「石油需給適正化法」をあっという間に成立させ、電力・石油の20%削減、テレビの放映時間の短縮、ガソリン・スタンドの休日営業停止などの対応を矢継ぎ早に打ち出している。田中は「ボクは省庁のどこを押せば、どんな音色を発するか、すべて分かっている」と漏らしていたが、今国民に何が必要かの直感力には鋭いものがあった。今田中角栄が生きていたら「一刻も早く景気対策を打て」と指示するに違いない。外交をみれば中曽根康弘は、日米関係を“ロン・ヤス関係”という一見きざに見えるキャッチフレーズで形容して、自分を売り出したし、小泉純一郎は単身北朝鮮に乗り込むという度胸の良さを、国民に示した。“捨て身“の外交であった。

 長期政権を維持した佐藤栄作は、自分を前面出すことは下手だった。これを補って官房長官・橋本登美三郎は、これはという政策の発表には必ず「首相指示」と付け加えて、首相を前面に出すことを忘れなかった。首相は自分と同格くらいにしか思っていない官房長官を任命しても、この芸当は真似できない。佐藤は涙を出すことだけは得意で、身障者などをみるとすぐに泣いた。無骨な大平正芳は、物価高へのけん制で生鮮市場をよく見回った。スーパーを見学する福田は記憶にない。歴代の優秀な首相は、あの手この手で自らを国民に向けて“発信”しようとしている。苦労から発する“情“も感じられた。福田は二世議員の弱点、つまりこの苦労人の持つ“情”が感じられない。「他人事のようにしゃべる」という批判が定着しているのもそのせいだ。要するに、素質に起因した支持率の低迷ばかりは直しようがない、ということだ。これで内閣改造しても、果たして支持率が劇的に上向くかというと、無理だろう。予言しておく。
 
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