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2008-07-08 18:05

(連載)求められる政策形成の構造変化(1)

中島貴彦  無職
 20年後の国民にとって、何が成功といえるのか、そのイメージを共有していないので、国民の間には底知れぬ不安が鬱積し、政治への信頼が失われつつあります。国民は政策を選択することも、批判することもできなくなっています。そうならないためには、国民、政策立案者、そしてマス・メディアが変化する必要があります。さて、現在、国民がもつ政策の良し悪しを判断する力はいかなるレベルにあるのでしょうか。ここでは具体的に日朝平壌宣言をあげてみます。この宣言に対しては、それが“拉致”にまったく言及していなかったこと、拉致や核の解決などに関する日本側の懸念が払拭されていなかったこと、さらにその状況にもかかわらず日本側は経済協力の約束をしていること、に批判が寄せられました。

 では、この政策担当者はこのように批判されることを自ら望んで締結したのでしょうか。外交は永久に続く国家間関係であるので、相手の顔をたてることも必要であり、交渉では国民に評価されがちな100対0よりも、51対49で勝つことが重要である場合もあります。国民の要求と相手国の要求の間で板ばさみになり苦悩する生身の人間である交渉担当者が、いかに最大限の意義を見出して、合意に到達したのかは、無視されるべきではありません。結果だけを見て、批判のみに終始する、偏った世論は、何か大事な側面を見落としているのではないでしょうか。

 これは従来の政策形成の構造を考慮すれば、やむを得なかったかもしれません。情報が集まる官が主導で政策が立案され、国民は結果のみを見て、評価を下してきたという構造です。ところが、我々は最近その構造に二つの劇的な変化を見ました。一つは、行政官庁対国民の対立構造から行政官庁対国民・内閣の対立構造への移行ともいえる、内閣機能の充実です。マニフェストの導入、そして政党が独自にシンクタンクを設けようとしていることも重要です。もはや政府だけが主役ではありません。もう一つは、政府も行政手続法改正や情報公開制度の創設で、国民に対する説明責任を果たし、適正な行政を確保するべく努力していることです。事後における救済では、国民にとって不十分なのです。このように政策の形成に、事前に参加・監視する機会が国民に与えられつつあります。(つづく)
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