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2008-07-07 17:39

(連載)日本も独自の有人宇宙計画を(1)

青木節子  慶應義塾大学教授
 中国国家航天局は、7月2日、中国の3回目の有人宇宙飛行となる「神舟7号」の開発・試験チームが、酒泉衛星発射センターに向かったと発表した。センターで最終試験を行った後、10月に打上げの予定である。今回は、3人の宇宙飛行士が搭乗し、そのうちの1人が船外活動を行い、神舟から小型衛星の放出を行う予定である。中国は、2003年に世界で3番目に有人飛行を成功させた国となり、2005年には、2人乗りで1週間弱の飛行を成功させた。これまで、「宇宙白書」などで公表した予定を上回るペースで有人探査計画を進めている。今年、船外活動を成功させると、次は軌道ステーションの運営、そして2017年頃に月への有人着陸を目指すことになる。第2回中国宇宙白書では2020年以降としているが、その後の宇宙計画の順調な進展により計画を早めた、と新華社が2008年3月に報道した。米国NASAも、中国の有人月着陸は2017-18年頃であろうと予測している。

 米国は、1972年のアポロ17号を最後に、月の有人着陸活動を停止していたが、2004年にブッシュ大統領が月および火星に宇宙飛行士を送る計画を発表して以来、世界では再び月への注目が高まり、「第二次月ラッシュ」とも言われている。20世紀末より欧州宇宙機関(ESA)や日本は月の無人探査を営々と進めており、急に月探査が活性化したわけではないが、宇宙科学界を超えて、世界の公衆の注目が集まったという意味では、米国の新宇宙探査宣言はやはり大きな力をもっている。2007年9月、日本は月探査機「かぐや」の打上げに成功し、アポロ以来最大規模の月の情報収集を行い、月を調べ尽くそうとしている。10月には、中国がやはり月探査機「嫦娥」の打上げに成功し、今年はインドと米国の無人探査機打上げが予定されている。

 日中印を比較すると、日本の「かぐや」が月の探査において最も高性能のセンサーを有しているが、それはあくまで宇宙コミュニティ間の評判と尊敬にとどまるものである。日本は1970年2月、世界で4番目に自国の射場から、国産ロケットで国産衛星を打ち上げた国である。現在でも射場、ロケット、衛星を自律的に保有する国は世界でわずか7ヵ国に過ぎない。1969年の国会決議のしばりがあり、本年5月に宇宙基本法が制定されるまでは、宇宙の防衛的な軍事利用は一切禁止されていたので、軍事プログラムを中心に宇宙技術を磨いてきた各国と比べてハンディをもつ日本ではあるが、静止衛星の実用化を世界で2番目に実現し、世界で初めて小惑星の砂の採集に一部成功するなど、日本は、まぎれもなく宇宙先進国である。(つづく)
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