国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-07-02 08:01

中国のサミット完全参加は時期尚早

杉浦正章  政治評論家
 フランス大統領・サルコジらが中国、インドなどを加えたサミット拡大論を唱えているが、議長である福田康夫は、これを正式議題として取り上げる予定はない。国際政治の舞台における大きなテーマであるが、恐らく日本は予見しうる将来においても反対し続ければよい。もちろん日本の安保理常任理事国入りとのバーターに使うことも視野に入れてのことである。1日の産経新聞がサミット首脳会合が、新興工業国である中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの5か国を加えた「13か国体制」に拡大することを正式議題にすると報じた。本当なら一大スクープとなるところだったが、外相・高村正彦が「正式議題にならない」と否定、わずか“数時間のスクープ”に終わった。新聞製作上のテクニックから言えば、「正式議題」と踏み切ったのが下手だ。逃げをうつなら「話題に」くらいにしておけばまだよかっただろう。サルコジが晩餐会など非公式な場面で持ち出す可能性はまだあるのだから。

 サルコジは、先の福田との会談でG8拡大について「国際社会の変化に対応してG8もその参加国を拡大することが必要」と述べている。これに対して福田は「サミットは、国際社会において大きな責任を共有する少人数の首脳による、率直な意見交換の場であり、その性格はきわめて貴重かつ有意義」と、事実上反対の姿勢を鮮明にしている。参加国の中では英首相・ブラウンも拡大論である。確かに中国、インドなど新興工業国の登場で国際経済、環境、貧困など、G8だけでは対処しきれない問題も多く発生しており、少なくとも中国、インドはサミットに参加しても不思議ではない。最近のサミットの形骸化が指摘される中においては、“活性化”要因となるかもしれない。しかし、国際政治はそう甘いものではない。現在サミットは新興国を含めた「アウトリーチ」と呼ばれる会合が8年前の九州・沖縄サミットから定着している。ましてや「アウトリーチ」をサミットに拡大すべきだとは中国もインドも公式に主張していない。当面は「アウトリーチ」で機能を果たして行けばよい。

 ロシアも、2002年のカナナスキス・サミットで 完全参加の実現が決定するまでに段階を踏んでいる。1991年にソ連との枠外会合、1994年にロシアが政治討議参加、1997年に全日程参加といった具合だ。とりわけ中国の参加については、外務省などにアジアにおける日本の発言力が相対的に弱体化するとの懸念があるが、それではヨーロッパ主要国は隣国の参加を懸念したか。米国は隣国カナダのサミット参加をなぜ勧めたかということになる。将来的には島国根性丸出しの姿勢が国際的潮流に後れをとることになりかねない。G8に固執する根拠の方が乏しくなる恐れがあるのだ。したがって問題は、国際政治テクニックの側面にある。中国は、日本の国連常任理事会入りに反対し続けており、これが国家主席・胡錦涛訪日と四川地震の日中友好ムードでどう変わるかということである。有り体に言えばに、日中双方が国連、サミットにそれぞれ“昇格“という形で問題処理をはかればよいということになる。いずれにせよ、早期に決着を目指す話ではない。サルコジが主張すれば福田はお得意の“他人事”風にさらりと受け流せばよい。すべては駆引き、取引きの後のこと。先の長い話だ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム