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2008-07-01 17:34

テロ活動の再活性化は対岸の火事にあらず

古川勝久  (独) 科学技術振興機構社会技術研究開発センターフェロー
 今やアルカイダによるテロ活動の再活性化が、アフガニスタン、パキスタン、東アフリカ諸国、欧州を初めとする様々な国々で確認されている。日本ではあまり報道されていないが、テロ脅威はむしろ高まっているとの評価が、世界各国のテロ対策当局から聞かれる。これは、G8サミットを主催する日本にとっても、他人事ではない。

 その背景にあるのは、2006年9月にパキスタン政府がパキスタン・アフガニスタン国境付近の北ワジリスタンにおいてタリバンと結んだ停戦協定である。この結果、南北ワジリスタン地域は事実上、タリバンの支配地域になり、タリバンが事実上聖域を確保したことで、その領域内でアルカイダも軍事訓練キャンプなどを運営、ここに世界各地から過激派をリクルートし、新たなテロ要員を訓練している。

 例えば、2008年1月には、スペイン・バルセロナ市の公共交通機関を対象に爆破テロ攻撃を計画していた容疑で、パキスタン人8名、インド人2名が逮捕された。メンバーはタブリーグ・ジャマート(イスラム原理主義思想団体)の思想に強く影響されていた。スペイン裁判所の記録などによれば、これらの自爆志願者は、パキスタン国内でリクルートされ、訓練を受けている。その後、スペインに送られて、同国内にすでに存在していた聖戦主義者ネットワークに合流したものと考えられている。

 スペイン当局は、聖戦主義者ネットワークの指揮命令機能とインフラがパキスタン国内に存在しており、スペインのみならず、欧州域内の聖戦主義ネットワークの主要な部分をコントロールしていると分析する。欧州各地に同様のセルが設立されており、これらが相互に連携し合っているとの分析もある。今や、欧州国籍の移民系である「ホーム・グロウン・テロリスト」と、特殊な訓練や指令を受けた外国人との混成チームによる、いわば「ハイブリッド型」のテロ組織の台頭が確認されている。アルカイダは極めて柔軟に環境変化に対応し、新しい形態で再起している。

 日本にも、イスラム原理主義思想を掲げる海外の宗教団体やNGOが比較的頻繁に来日しており、移民コミュニティーなどに対して布教活動を行っている。日本は、すでにアルカイダから「敵」として名指しされている。これは極めて重みのある現実であることを忘れるべきではない。
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