国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-06-30 08:05

サミットは石油投機の暴走に歯止めを!

杉浦正章  政治評論家
 世界経済は「第3次石油ショック」とも言える石油価格の暴騰と、これが連動する世界同時インフレの危機に直面している。主要国首脳会議(洞爺湖サミット)の最大の課題は、地球温暖化もさることながら、石油暴騰の根底にある投機マネーの動きをいかに効果的に牽制できるかにかかってきた。「サミット対投機マネー」の戦いの構図である。サミット後も石油価格が暴騰を続けるようなら、主要国首脳の力量が問われ、サミットの形骸化が定着することになりかねない。そもそもサミットは1973年の第1次石油ショックとそれに続く世界不況に起源を持つ。1975年の第1回ランブイエ・サミットを取材したが、世界経済に責任を持って対処しなければならない、という6か国首脳の意気込みがひしひしと取材陣に伝わってきた。ソ連など共産圏への牽制の意味合いもあり、張り詰めた空気であった。

 最近のサミットの合意は、下部機構の事前調整の上に乗った文書確認的な色彩が強く、首脳同士が“合宿”で本音を語り合い、大胆に方向を打ち出す、という本来の趣旨から外れる傾向を見せている。しかし今回のサミットは、それでは済まない問題を抱えるに至った。「第3次石油ショック」と言ってもおかしくない石油の暴騰と、それがもたらす食料、物価の高騰、まさに世界同時インフレが走り出した中での首脳会議であるからだ。バレル140ドルを突破して、天井知らずの暴騰を続ける石油価格の最大の元凶は、潤沢すぎる資金を背景にした投機の動きがとどまるところを知らないことにある。

 サミット首脳の間でも懸念は広がっており、フランス大統領サルコジは首相・福田康夫との会談で強い懸念を表明し、「価格の低下や抑制のためには国際社会が力を合わせる必要があり、短期・長期両方の方策を考えなければならない」と強調している。もっとも、投機の規制、統制は自由主義経済の根幹に踏み込むことになり、事実上極めて困難だ。それだからと言って、主要国首脳が集まり、投機の動きに手をこまねいている姿を見せれば、投機筋はここぞとばかりに買いに走るだろう。投機マネーの暴走に何らかのブレーキをかけられるかどうか、インパクトと即効性のある対策が打ち出せるかどうか、まさにサミットの力量が試されている状況だ。

 サミットの首脳文書案では、原油高がインフレ圧力を高め、世界経済に悪影響を与えているとの強い懸念を表明し、エネルギー産業の投資促進、石油市場の透明性向上など投機に対する牽制が打ち出されるというが、これでは作文の域を出ない。この程度の牽制策なら、すれっからしの投機筋は買い材料にするだけだ。また、議長である福田がここまで世界経済を悪化させている問題を事実上看過するような印象を与えれば、サミットの成否にもかかわることとなろう。秘密裏に即効性のある“投機牽制策”を準備しているならたいしたものだが、問題の在りかに気づいていない“危険性”もある。議長としてかなえの軽重を問われる場面は、むしろ石油暴騰にあることを認識すべきだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム