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2008-05-08 18:35

男女を超えて、「骨太首相」の登場を望む

峰村 泰三  会社役員
 昨5月7日付けの杉浦正章様の投稿「日本では『女性首相』はまだ無理」(601号)を胸がすく想いで拝読いたしました。私は決して女性が首相になることに反対ではなく、むしろ我が国にも頼もしい女性首相が早く登場してほしいと、今か今かと心待ちにしているものであります。ただしそれは、その人物が「女性である」ということ自体が価値を持ったからではなく、その人物が、サッチャー氏らに匹敵するような「知性と迫力、重厚さ」を持ち備えたが故の当然の帰結としてであることを望みます。たしかに現在、永田町には数多くの女性議員がおられ、みなさんそれぞれ真摯な思いで議員活動に励んでおられることとと思いますが、彼女らに国際級の問題意識と使命感、そして判断力や行動力が備わっているかどうかと尋ねられれば、やはり返答に窮するやもしれません。

 むろんこれは女性政治家だけの問題ではなく、男性政治家にもおおむね当てはまることであります。世界という大きな舞台で、堂々と各国の海千山千の猛者政治家諸君を前にして、ひるむことなく我が国の国益を守ろうと必死で活躍する政治家は、久しく我々の眼前から姿を消してしまったのではないでしょうか。なぜそのような頼もしい政治家が日本から消えたかと問われると、素人考えではありますが、その理由は大きく分けて二つあり、一つには明治期の「坂の上の雲」あるいは戦後の高度成長期に見られたような中長期的な国家的目標が、現在の日本にはないこと、そして二つ目にはマス・メディアを過剰に意識したいわゆる「劇場型政治」がのさばっているからであると思われます。それ以外にも、社会が成熟(あるいは爛熟?)するにつれて、政治学者勝田吉太郎先生がおっしゃるところの「滅公奉私」型人間が多くなった、ことも挙げられるかもしれません。

 しかし、上に挙げた「劇場型政治」や「滅公奉私」型人間は、世界の先進国に共通して見られる特徴であり、我が国に限られた現象ではない、ことも確かであります。とくにアメリカの政治なぞは、もはやハリウッド的な演出文化とどこが違うのか、とあきれるばかりであります。にもかかわらず、アメリカにライス氏のような骨太の政治家が生まれえたのは、アメリカが一時ほどではないにせよ、やはり世界的な使命感と国家戦略を持って、噴出する批判や反米感情をもろともせず、自らが「世界史」を作り出しているのだ、と言わんばかりの主体性を持っているからではないでしょうか。この主体性は、反面恐ろしいものではあります。たしかに時として国民に多大な犠牲を強いることもありましょう。若者を戦場に送り込むことも辞さないでしょう。しかし、世界史という大きな流れの中にあっては、傍観者であることは、実は流れに流され、自らの立ち位置すら失うことにつながります。

 歴史の「主役」であるか「傍観者」であるかは、時として生きるか死ぬかの分かれ道をも意味します。そのような緊張感を失った国の政治家は、もはや刹那的にメディアに媚びへつらい、日々低級な政治劇におぼれるしかありますまい。とすれば、現在、我が国に求められているものは、はっきりしていると思われます。それはいうまでもなく、中長期的視野に立った国家的目標と戦略であります。いいかえれば日本と世界の近未来のシナリオであります。こんな話をすると、昭和初期の京都学派の「世界史の哲学」の焼き直しかと揶揄される向きもありましょうが、私は「西洋と東洋の対決」などといったルサンチマン的感情に与するものではありません。むしろ洋の東西を問わず人類が直面する様々な問題に、積極的に取り組むというごく常識的な話をしているのであります。このようなことが難しすぎて、我が国には無理だというのなら、座して凋落に甘んじるしかありませんが、そうではないと期待したいものです。我が国が「世界史」に対して主体性を持つことができれば、立派な「女性首相」が自ずと生まれることでしょう。
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