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2008-05-06 20:52

中国の膨張に備え、日米韓台の合従を強化せよ

太田正利  元駐南アフリカ大使・元杏林大学教授
 「ヴォイス・オヴ・アメリカ」によるとティモシー・キーティング米太平洋艦隊総司令官が、昨年5月の北京訪問後の記者会見で、「中国が空母を中心とする機動部隊を作ろうとする気持ちは理解できるので、可能な範囲で手伝おう」との発言をした(「ザックバラン紙」07年7月号)由。この話に接した筆者の咄嗟の反応は、「気は確かか!」だった。それから10箇月経った本年初頭の1月28日に、私は本政策掲示板「百花斉放」上で、日本がなすべき決意についての所見を披露した。その中で特に台湾の総統選に触れ、「1月の立法院選で野党国民党が圧勝し、その勢いで馬英九氏が勝利した場合には、本土による台湾の併呑等の恐るべき事態に直面することあり得べし」と警告を発しておいた。

 国民党の馬英九総統の勝利の要因は、国民党が「台湾人意識」と「台湾自決主義」を取り入れたことだった。言ってみれば、民進党の価値観を取り入れたのであり、外省人の勝利という側面だけではなかったのである。問題は、台湾がかかる「台湾人意識」や「台湾自決主義」をどこまで維持できるかである。換言すれば、台湾を台湾人の国(中国大陸から独立した政治主体)として存続させる原動力になるかという点である。馬氏と米国の関係は極めて深く、この点はよく知られている。民進党の陳政権は独立志向(国連加入希望等)が強く、米を悩ませ、大陸は猛反撥していた。しかし、馬の背後にある米国は、台湾の現状を維持したいという政策であり、中国は如何なる独立志向の政策も認めないという政策であって、米中の意向は一致している。

 一寸横路にそれるが、今回の聖火リレーで、チベット問題をめぐる中国の態度があからさまになり、国際的に評判を落としたようだ。興味深かったのはソウルで、チベットのみならず、脱北者の人権についても、中国を批判するグループがリレーと並走し、この問題の存在を世界にアピールしたことである。時をほぼ同じくして、フランスの有力日刊紙ル・フィガロが北朝鮮による拉致問題を大きく扱う記事を掲載した。ロシアのプーチン大統領も福田総理との会談でこの問題に触れ、「許せない行為だ」と述べ、本件で「日本と協力していく」と述べた。中国も拉致問題は他人事との態度を取り得ず、漸く日本の一人相撲でなくなった模様で、ご同慶に堪えない。

 さて、李明博韓国新大統領が、賢明にも盧武鉉政策についてはあからさまな批判をせず、実質的にこれを修正して「北」に対処し、しかもその過程において、日米との共同歩調を強調しているのが目立つ。事実、最近同大統領は、最初の訪米の帰路、日本に立ち寄り、福田総理等と会談した。日韓間の対話成立により対北朝鮮の共通政策の確立が既に行われている。これに米がからんで、少なくとも形の上では対北朝鮮政策は三位一体となっている。しかしながら、問題は米国である。特に対中国、対北朝鮮での弱腰が顕著である。3月11日、例のキーティング司令官が米上院公聴会で、昨年5月訪中の際、中国軍幹部から米中による太平洋の分割支配の提案があったと証言した。すなわち、「中国が空母を持った暁には」ハワイ以東を米国が、以西を中国が管理することで「如何か」と打診してきたのだという。冒頭の「中国が機動部隊を作ろうとする気持ちは理解できる」とのキーティング発言は、かかる中国を勇気づけたのではないか!日本としては、今こそ韓国の李政権や、台湾の馬政権とも(たとえばFTA締結などで)連携を強化し、日米韓台の合従を通じて、中国の膨張を抑える中長期の大戦略を構築すべきではないだろうか。機は熟していると感じている昨今である。
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