国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-04-21 10:36

外資電源開発株買増しへの政府中止勧告を支持する

角田勝彦  団体役員・元大使
 政府は、4月16日、英投資ファンド(TCI)に対し、国内電力卸・電源開発(Jパワー)株の買い増し計画を中止するよう勧告した。TCIはJパワー株を9.9%保有し、今年1月に20%まで追加取得する計画を提出していたのである。TCI側は「海外からの株式投資を拒否することで、日本の金融資産は過小評価される」「中止勧告は日本経済、電力業界、国民に大きな悪影響を及ぼす」と批判した。一部には、日本は金融立国を目指し市場を開くと言いつつ、正反対のことをしているとの批判がある。

 しかし、日本の外為法は、「国の安全」「公の秩序」「公衆の安全」の3つの観点から、一定の場合外資に申請を義務づけている。今回の例は、TCIが「Jパワーの経営方針で原発の建設・運営への悪影響や送電設備の修繕などに関し、具体策を示さなかった」ため、TCIの短期的な収益にこだわった経営参画では、将来電力の安定供給に支障を来すとともに、国の原子力政策に影響を与える恐れがあると認定されたもので、妥当な判断と目される。なお、政府は、この中止勧告を、外為法の下であった過去3年間で約760件の事前届け出のなかで、ただ1件の例外であり、外国の対日投資を促す姿勢に変わりはないと強調している。

 一事が万事である。企業の短期的利益が全てではない。自由化による国の利益は、各企業や業界、さらには財界の(経済中心の)観点からのみ判断されてはならない。私は、いわゆる、ぬるま湯鎖国論や攘夷論を奉じるものではないし、グローバリゼーション(世界一体化)の価値を認めている。例えば世界GDPは1995年の28兆3379億ドル(同年の世界人口は57億1600万人)から2007年は53兆3524億ドル(同66億1590万人)にほぼ倍増した。ひとり当たりGDPは4958ドルから8064ドルに増えた。世界人口のうち1日1ドル未満の収入で暮らす人の比率は1990年の32%から2004年に19%(実数では9億8000万人)に減少した。人類は豊かになった(ただし格差は増大した)。

 また、私は第3次産業の重要性を充分認識している。英国が国を開き世界のマネーを集める金融立国で経済再生を実現したのは、周知の事実である。しかしまた、日本には「三方良し(つまり売り手に良し、買い手に良し、世間に良し)の商売」という考え方もある。株が高くなりさえすれば良い、企業業績が上がりさえすれば良いとの考えは、企業の社会的責任に背く。それに企業エゴは、当座は見えない社会的コストを他者、具体的には国に負担させることを意味する。つまり国民の経済的負担を増やすことになる。さらに私は経済成長一辺倒では国の進路を誤ると考える。たとえば安易に単純労働者の導入に踏み切れば、必然的に2級市民を発生させ、膨大な治安、医療、教育などの支出を必要とさせるほか、社会的軋轢を生むことになろう。どう判断するかは政治の責任に委ねられている。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム