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2008-03-14 11:38

増大する日米間の中国認識の差

坂本正弘  日本戦略研究フォーラム副理事長
 最近、米中接近の趨勢が伝えられる中で、日米間に中国の認識の差が目に付く。ポールソン財務長官はゴールドマン・サックス社の前会長であり、プロチャイナの筆頭といえるが、「中国の発展はアメリカの利益である」とする。多くの米国人は「中国は怖くない。軍事力では20年差がある。アメリカ企業を儲けさせてくれ、安いものを供給してくれる。強い中国は弱い中国より望ましい」という。

 2008年1・2月の "Foreign Affaires" は「Changing China」の特集号だが、Stephanie Kleineは「中国は、ミャンマー、北朝鮮、スーダンなど無頼国家への外交アクセスがあり、アクセスをもっていない米国にとって補完的な価値がある」とする。中国が「米中による世界の共同支配」を主張する状況の裏事情でもある。

 一方、同誌でJohn Ikenberry教授は、「中国の台頭が21世紀の最も劇的な出来事である」とした上で、「中国のGDPは2020年ごろに米国を抜く」という展望を示すが、「OECD全体のGDPは中国をその後も上回るので、米国はOECD諸国と連帯し、中国に西側の規則を守るよう強く迫るべき」とする。同教授は、これまで中国に批判的な姿勢を保ってきた点を勘案すると、中国の台頭に強い危機感を抱いていると理解される。

 2008年3月、ペンタゴンは『中国の軍事力』という報告を出したが、中国の軍事戦略が孫子の兵法に影響されている点を指摘している。とう小平の24字外交「弱いときは慎重に、強くなるまで待て」というのはその典型だが、弱者(中国)が強者(米国)と対抗する上で、不均整戦の有効性を持ち上げる。不均整戦の内容は不明だが、中国が情報戦、サイバー戦に力を入れ、宇宙を重視していることを指摘する。しかし、同報告は、中国軍の3つの誤認識が、誤った計算と危機を招く可能性を指摘している。第一は、他国が中国の軍事力を過小評価する危険性。第二は、中国の指導者が自国の軍事力を過大評価する危険性。第三は、中国の指導者が周辺国が如何に中国の決定の影響を重視しているかを過小評価し、周辺国がどのように行動するかを過小評価する危険性である。この指摘は秀逸である。

 「敵を欺くものは、味方を欺き、最後は自己をも欺く」という趣旨に繋がるか?中国の兵法が常に戦術・タクチックを重視しすぎるのは、他国の共感を得られない。中国の古典兵法重視の陥穽といえようか。
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