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2008-02-07 09:11

日本政府は中国高官の発言に筋を通して対応せよ

杉浦正章  政治評論家
 中国の国内外を意識した巧みな宣伝戦が始まった。中国国家品質監督検査検疫総局の副局長魏伝忠の発言は、まるで今回の毒ギョウザ事件が日本の過激派の仕組んだ事件であるかのような口ぶりである。そして、その発言はあっという間に全世界に伝わった。オリンピックを意識して、事件を“ぼかす”ことを狙ったのだろう。日本政府は、これまでのところ冷静な大人の対応をとっているが、中国側が過激派を持ち出して“政治的事件”に“昇格”しようとする限り、自粛もほどほどにしなければならない。筋を通さなければ宣伝戦に負ける。

 魏伝忠発言は「日本の警察当局は、この事件を食品安全の事件ではなく、人為的に行われたものと判断している」と指摘した。次いで「中国国内で人為的に毒物を混入させた可能性は極めて小さい」との見方を示した上で、「一部の極端な分子は、中日友好の発展ぶりに不満を持っている」と述べたわけだから、いかにも日本側過激派の工作を疑わせる発言である。思わず、グリコ森永事件を思い出したが、今回ばかりは、状況証拠は中国国内で混入したことを物語るものばかりだ。日本では入手困難な薬品が使われたことも“陰謀”ということになるが、そこまでやる過激派はまずいまい。

 日本側では、政府も国民も中国での製造過程で毒物が混入したという見方が圧倒的であり、日中間で見方の対立が表面化した形だ。逆に、もし言われているように工場の労使紛争が原因なら、オリンピックを前に中国の恥部を露呈することになる。これは中国政府としては、どうしても避けたいところだろう。インターネット上の風評ならともかく、中国政府高官の発言である以上、政府は公式ルートを通じて、その真意、根拠を問いただすべきである。責任ある立場の者の公式な見解であり、あとから同総局の輸出入食品安全局長王大寧が「魏副総局長が話したのは、一つの可能性。極端分子は日本側かもしれないし、中国側かもしれない」と釈明したが、これでは納得できるものではあるまい。

 政府の基本姿勢は、せっかく良好な関係に移行しつつある日中関係を損ないたくないというところにあるようだが、オリンピックを前に国際関係を傷つけたくないのは、中国側も同じだ。メタミドホスの製造ルート一つをとっても、中国側の捜査で信用できるかどうか疑問だし、現に捜査は壁に突き当たっているという。ここは政治家レベルで主張すべきは主張し、問題の早期解決につなげることこそが、日中平和友好の大道に他ならない。
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