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2008-01-14 14:34

「洞爺湖サミット」で問われる日本の存在感

小沢一彦  桜美林大学・大学院教授
 2007年夏の参院選での与党の惨敗後に、福田政権は安倍内閣をほぼ引き継いで「暫定的」に発足したが、行き詰まりを見せていた中で、自民・民主の「大連立」交渉を数回経たことなどもあり、意外にあっさりと「新テロ特別措置法」を無事、再可決させることができた。ねじれ国会が継続する以上、今年一年、再び「大連立」や「政策的・部分連立」問題が世間を騒がせるであろう。

 民主党の小沢代表のいう「国連によるお墨付きが必要」論や、戦後長く放置され、いまだ片付いていない「集団的自衛権はあるが、行使できない」論が、それなりに正論であるとしても、一種の「国際公約」であり、また日米同盟の履行にかかわる「国際信義」であるインド洋での給油・補給活動の約束が守られた意義は大きい。イラン核開発問題や揺れるパキスタン情勢で、さらに不安定化するインド洋であるが、自衛隊の方には十分な危機管理のもと安全を確保して頑張って頂きたい。

 日本は、2008年の夏には、一種の世界の主役とも呼べる「北海道・洞爺湖サミット」のホスト国となる。少子高齢化と経済停滞で国際的存在感が急下降し、アジア地域の中ですら内向きで孤立しつつある日本は、誰が日本を代表するのであれ、是非ともこの機会をとらえて、力強いメッセージを全世界に向けて発信して頂きたい。1997年の京都議定書から後退したままの、空虚な言葉や演説のみで終らせるのではなく、地球温暖化阻止のため、欧州に負けない踏み込んだ排出量削減に向けた具体的行動プランと、資源・部族紛争・旱魃・エイズなどの疫病に相変わらず苦しんでいるアフリカに、いかに本格的な支援の手を差し伸べるかが課題である。

 経済力の低下と少子高齢化による国内マーケットの縮小で、日本が今後国際貢献できる分野は、ますます限られてゆく。日本は限られた財政と資源の制約の中、「選択と集中」の戦略的対応をする必要がある。地球環境保護や新型感染症などの疫病対策、紛争・環境難民救済、教育、平和協力(核拡散阻止)などの「ソフト・パワー分野」での貢献を選択し、そこに力を集中すべきだ。

 日本国憲法もそうだが、半世紀以上も前につくられた国連憲章でも、地球環境保護の比重は低い。しかし、日本政府は、この際各方面の反対を押さえても、国連環境計画などを統合強化して、これを「世界環境機構(WEO)」に発展させることや、日本独自の「環境投資ファンド」を創設することを提唱してみてはいかがであろうか。二酸化炭素の排出権取引のビジネスのみに目を奪われるのではなく、根本的な化石エネルギーの制限や代替エネルギーへの転換、そして森林伐採阻止や大規模植林、稀少動植物の保護保存に取り組むべきである。

 さらに、中長期的には、急激なグローバル市場経済化の緩衝材になるような、アジアの持続的経済発展と経済安定化のための「グレーター・アジア経済共同体」や、何らかの「アジア貿易・金融リスク・ヘッジ」のシステムも準備しておきたい。今夏の「北海道・洞爺湖サミット」が、日本を久々に世界にアピールできる最高の機会である。このチャンスを、是非とも日本の存在感の向上に生かして頂きたい。
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