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2008-01-08 09:29

秋の解散が妥当だろう

杉浦正章  政治評論家
 新テロ法案の成立が確定し、政治の主戦場は通常国会に移行するが、野党は同国会での解散・総選挙実現に向けて総力を挙げる方針である。しかし本日付けの本欄「百花斉放」で角田勝彦氏が指摘するとおり、首相は野党ペースでの解散・総選挙の罠にはまってはならない。来年度予算の成立、洞爺湖サミットと続く日程を粛々とこなすべきである。その上で秋にでも国民の信を問えばよい。民主党の小沢一郎氏の新年の発言が何となく浮いている感じを受けるのは、私だけだろうか。「火の玉になり政権交代を」「人生を賭けて戦いに臨む」と意気込みばかりが前に出て、知性に欠けている。政治はテレビ討論の場ではないのだから、キャッチフレーズを繰り返しても、国民の共感を得るのは難しい。

 新テロ法案の扱いにしても、従来の民主党の主張から言えば、堂々と否決すべきところを、継続審議という場当たりで姑息な対応を取ることになった。民主党支持者にとっても意味不明だろう。通常国会もおそらくマスコミを意識したポピュリズムの政治を展開するだろう。道路特定財源のための租税特別措置法改正案反対方針がよい例である。リッター25円の引き下げは庶民にとってありがたいことだが、国家財政に2.6兆円の穴が空くのにどう対処するのか。おまけに25円程度は価格調整に使われて実際に引き下げになるかは疑問視されている。こうした場当たり的な国会対策、人気重視の政治ばかり展開して、「火の玉」になってもらっても、困るのは国民だ。

 しかし、通常国会は、道路特定財源問題と年金公約違反問題、場合によっては防衛省疑惑も加わり、波乱不可避の展開を見せるだろう。政府・与党が3分の2ルールを使って予算関連法案を成立させれば、民主党は首相問責決議案で対抗するだろう。朝日新聞など一部マスコミも解散要求の社説を展開する可能性が大きい。解散ムードは高まることが避けられまい。しかし、年金問題が決着しない限り、福田康夫首相は解散に踏み切らないし、踏み切れないだろう。「年金」は福田政権にとってアキレス腱であり、とりわけ民主党が年金での参院の圧勝を衆院にも持ち込みたいと狙っている限り、解散権を発動すれば、それこそ衆院でも与野党逆転しかねない要素がある。

 福田首相は通常国会は解散なしで何がなんでも乗りきる必要があるのである。乗り切れれば7月7日のサミットとなるが、サミットを背景に解散することにも疑問がある。実はサミットの年には過去4回とも総選挙が行われている。2000年の森喜朗首相の場合は選挙がサミットの1カ月前だから除外するとして、79年の大平正芳、86年の中曽根康弘、93年の宮沢喜一の各首相がそれぞれサミット後に総選挙に踏み切った。大平、宮沢両氏は惨敗、中曽根氏だけが304議席取って圧勝した。しかし中曽根氏の圧勝は、「死んだふり解散」という機略に加えて、衆参同日選挙がプラスに作用した。サミットの効果はほとんどない。各首相の高揚とは異なり国民の目は醒めているのである。もっとも、通常国会さえ乗り切れれば、何もサミット直後に選挙をする必要もない。秋になれば衆院議員の任期も3年を過ぎ、与野党とも年貢の納め時と納得するだろう。したがって秋に臨時国会を召集して、事実上の話し合い解散に持ち込めばよいのである。福田政権の実績の全てを問えばよい。 
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