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2007-12-26 19:05

厳しさ増す米国の対日姿勢

鍋嶋敬三  評論家
 福田康夫内閣が発足して12月26日でちょうど3ヶ月だが、米国の日本に対する姿勢が厳しくなって来た。11月の福田ブッシュ会談では日米同盟を「一層盤石なものにする」ことで合意したが、テロ対策特別措置法が失効してインド洋から海上自衛隊が撤収、給油活動の再開を目指す新法の審議も解散含みの政局絡みで先行き不透明のまま年を越す。参院選での与党敗北による「ねじれ国会」の下で、日本はめりはりの利いた政策決定能力を失った。アフガニスタンやイラクでテロとの闘いに手を焼いている米国にすれば、日本の政局不安定が同盟関係を弱体化する方向に作用していると映るのだ。

 福田内閣発足の翌日というタイミングで公表された米議会調査局の日米関係に関する報告書は、米国の対日観の揺らぎを示すものとなった。同報告書は、ブッシュ政権下で「日米間の戦略的な協力の幅を広げ、日本がより積極的に国際的な役割を担う上で注目に値する前進があった」ことを高く評価し、その例証としてアフガニスタン、イラク戦争への自衛隊の後方支援、米軍再編と新しい日米軍事協力の強化を挙げた。しかし、そうした肯定的評価の上で「参院選での与党の歴史的敗北がこの日米協力を遅らせるかもしれない」との懸念をも示していた。

 与野党間の政治的駆け引きで日本が内向きになり、日米関係に対する日本政府の集中力が弱まれば、「日米関係は過去数年間の勢いを維持するのに苦労することになろう」と先行き不安も率直に示した。ブッシュ外交が北朝鮮の核交渉にシフトしたことや、従軍慰安婦問題で日本政府を批判した下院の決議、日本が次期主力戦闘機として導入しようとしたF22の輸出禁止ーーーなどが強力な同盟に対する日本の確信をある程度揺るがした可能性がある、とも指摘した。この報告書は3月に出たものの改訂版だが、僅か半年間に日米同盟関係への懸念をこれほど強めたことは、注目すべきだ。

 国防総省に新設されるアジア太平洋安全保障担当の次官補に指名されたジェームズ・シン氏が12月18日、上院軍事委員会での承認手続きのため提出した文書で「日本はアジアにおける貴重な同盟国であり、民主主義と繁栄の錨である」と述べる一方、米軍再編に関連して「自衛隊の役割と任務を拡大する上で、日本の動きは遅かった」と批判した。インド洋での給油中断も「退歩であり、有志連合諸国には失望だった」とあからさまに不満をぶつけた。同氏は承認されれば米軍再編のプロセスを軌道に乗せ、新テロ対策特措法の整備を日本政府に働き掛ける、と誓約した。民主党支配の議会対策に苦慮しているブッシュ政権としても、日本に甘くばかりしてはいられないという「いら立ち」が噴き出した形だ。1990年代のように日米関係を漂流させないためには、日本はスピードを持って対応しなければならない。
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