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2026-03-23 09:10

ホルムズ海峡、日本に強い期待ー日米首脳会談

鍋嶋 敬三 評論家
 ドナルド・トランプ米大統領と高市早苗首相の会談(3月19日、ワシントン)は焦点の中東情勢ではイラン・ホルムズ海峡への日本の自衛隊艦船の派遣について正面からの議論を避け、不協和音が表面化するのを取り敢えず回避した。高市首相は会談後の記者会見で「中東地域の平和と安定に向けて日米間で緊密な意思疎通を続けることを確認した」と語ったが、トランプ氏は会談で「日本は役割を強化すべきだ」と述べており、イラン戦争の展開次第では日本政府が大きな政治的決断を迫られる可能性を残した。首脳間の合意をまとめる日米共同声明は発表されず、日米間の戦略的投資、重要鉱物サプライチェーン強靭性、日米重要鉱物プロジェクト協力など三つの共同文書が公表された。経済的実利のための協力強化が正面に据えられたのである。

 それでもトランプ大統領の関心はホルムズ海峡だった。会談冒頭で「日米ともイランを脅威ととらえて」おり、原油の90%以上をホルムズ海峡を通じて得ている日本は「役割を引き受ける理由がある」、「行動に踏み出すことを期待する」と言い切った。高市首相はホルムズ海峡の事実上の閉鎖を非難して米国に同調する姿勢を示す一方、茂木敏充外相がイランのアラグチ外相と電話会談し封鎖解除を働きかけるなど、日本独自の外交努力をしていることを大統領に説明した。艦船派遣について首相は憲法の制約など日本の法律でできること、できないことを「詳細に説明」して収めたことは外交的な成果であった。

 この背景には日米会談と同じ日に、日本と英・仏・独・伊・オランダ6カ国首脳による「ホルムズ海峡に関する共同声明」が出されたことが日本への支えになったことを忘れてはならないだろう。声明は①ホルムズ海峡の事実上の閉鎖をもっとも強い言葉で非難、②船舶の航行を妨害する行為の停止、国連決議の尊重、③6カ国が安全な航行のための適切な取組に貢献、④国際エネルギー機関(IEA)による戦略石油備蓄の協調放出の決定を歓迎ーなどをうたった。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)が海峡防衛のため対米支援をしなかったと強い不満を募らせていたが、6カ国共同声明や日本がほかの国に先駆けて大量の石油備蓄放出に踏み切ったことが対日批判を和らげたことは間違いない。それでもトランプ氏は日米会談後も、ホルムズ海峡への日本の関与に強い関心を改めて示したことは留意すべきである。

 外交戦略では「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」について高市首相は日本外交の柱として戦略的に進化させていく決意を示して日米首脳間でもその推進を確認した(外務省発表)。「中国についても緊密な連携を確認した」という。なぜか台湾問題についての言及はない。しかし、米ホワイトハウス発表の「ファクトシート」には、「抑止力強化と防衛協力」とともに「地域安全保障の強化」の項目を別途立てて、両首脳が台湾海峡をめぐる平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄に不可欠の要素としてこれに関与すること、力と威圧などによる現状の一方的な変更のいかなる試みにも反対することを明記した。「台湾有事」として日本の安全保障に最も重要であり、日中関係悪化の直接の要因になっている台湾問題について日本外務省の公式文書に触れていないのは奇異な感じを受ける。高市首相は国会で詳細に説明する責任がある。

 首相はアメリカ建国250周年に当たり桜の苗木250本をトランプ大統領に贈った。夕食会では「自由と民主主義の理念を世界に示してきたアメリカが歴史的節目を迎える」と祝意を表した。しかし、「トランプのアメリカ」はベネズエラやイランへの攻撃で主権侵害、国際法違反の批判を国連など国際社会から受けている。理念を放棄し強者の論理を振りかざす国が世界の信頼と尊敬を受けられるのか。米国はどこに向かおうとしているのだろうか?
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