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2026-02-17 18:57

中国こそ現代の「軍国主義」だ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 2025年11月7日の衆議院予算委員会での「台湾有事は集団的自衛権行使の存立危機事態となり得る」との高市首相発言に対して中国は激しく反発し、対日渡航の大幅制限、自衛隊機に対する危険なレーダー照射、レアアース輸出規制、パンダ回収、対外悪宣伝活動など、様々な報復措置を取り、2026年2月8日の総選挙で高市自民党が圧勝した現在でも「高市発言」の撤回を執拗に要求している。しかし、安保法制における集団的自衛権行使の要件である「存立危機事態」とは、台湾防衛のために出動した米軍が中国軍に攻撃され、尖閣諸島をはじめ日本の存立が脅かされる事態であるから「高市発言」は日本の先制攻撃を主張したものではない。あくまでも中国による台湾武力侵攻に反対しこれを抑止する趣旨のものである。

 1972年の「日中共同声明」で日本は台湾が中国の一部であるとの中国の主張を理解し尊重するとしたが、これは両岸関係の平和的解決が大前提であり、日本が中国による台湾武力侵攻を容認したものではない。「高市発言」に対する中国の激しい反発と撤回要求は、台湾有事の場合に米国との集団的自衛権行使の可能性を否定しない「高市発言」が中国の台湾武力侵攻の大きな障害となるからである。中国は台湾有事に関し、台湾以外に日米両国を相手にすれば勝算が乏しいことを知っているのであり、だからこそ「高市発言」の撤回を強く求めているのである。このことは「高市発言」が台湾武力侵攻の抑止力であることを示しており、「撤回」は抑止力を失い台湾武力侵攻を促進することになる。

 仮に台湾有事になった場合は、地理的に台湾に近い沖縄の嘉手納、普天間、岩国米空軍基地、さらに原子力空母を擁する横須賀米第7艦隊、佐世保米海軍基地など、在日米軍基地の役割が決定的に重要になる。なぜなら、天然の要害である幅130キロの台湾海峡を渡り上陸を目指す中国艦船に対しては、台湾軍による地対艦・空対艦ミサイル攻撃のほかに、圧倒的な米艦船による艦対艦ミサイル攻撃・米F35戦闘機による空対艦ミサイル攻撃、米原潜による魚雷・ミサイル攻撃などは極めて有効だからである。すなわち、「台湾有事」を抑止するのは在日米軍基地の打撃力であり、日米同盟に基づく日本の集団的自衛権である。

 中国習近平政権は、前記の様々な対日圧力をかけても日本政府が「高市発言」を撤回しないため、国連をはじめ欧米諸国に対して対日軍国主義批判を強めている。中国の王毅外相は、2026年2月14日ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で、「高市発言は中国の主権に対する挑戦だ。台湾への侵略、植民地化の野心がある。日本は軍国主義だ。」と非難した(産経新聞2026年2月17日)。しかし、中国の軍事費は2025年36兆円、日本の2026年軍事費9兆円の4倍である。中国は空母や戦艦をはじめ、極超音速長射程核ミサイル、原子力潜水艦、戦闘爆撃機、各種ドローン兵器などを多数保有し、通常戦力のみならず核戦力も急速に拡大している。そして、巨大な軍事力を背景に日本やフィリピン、べトナム、台湾などを威圧している。台湾併合への軍事力使用の選択肢も放棄しない。周知のとおり、中国は南シナ海、東シナ海に浮かぶ岩礁や小島を中国領土に組み込もうとして、勝手に九段線を引き、支配地域を広げた。フィリピンが提訴した九段線を認めないオランダハーグ仲裁裁判所判決を紙屑のごとく捨て去った。そして、ベトナム領海やフィリピン領海内の島や岩礁を簒奪して軍事基地を建設した。さらに、尖閣諸島や日本領海への領海侵犯を繰り返している。軍国主義とは、軍事力による対外的発展を重視し、戦争とその準備のための政策や制度を国民生活の最上位に置く思想であるが、まさに中国こそが巨大な軍事力による対外的発展を重視し、力による現状変更を躊躇しない現代の「軍国主義」そのものである。
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