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2026-02-11 16:54

高市早苗政権は「国会で野党の反対があって出来ない」という言い訳はもうできない

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 高市早苗総裁率いる自民党は国会で戦時中の大政翼賛会に迫る議席占有率を達成した。3分の2という議席数は非常に重たい。これで、「野党が邪魔をして、私たちがやりたいことが出来ないんです」という言い訳はできない。最近になって、「自民党内には右から左までいてそう簡単ではない」という主張も出てきているが、そんな泣き言はいらない。国民が高市首相に「国民生活を何とかしてくれ」ということで与えた議席である。是非、国民生活が豊かになるようにしてもらいたい。

 しかし、話はそう簡単ではない。高市政権は2年間の食料品にかかる消費税率をゼロ%にするという話を「検討する」ということにして、この国会では法案を出さない構えである。高市早苗政権がやりたいことは改憲と防衛予算対GDP比引き上げである。これは、宗主国アメリカからの厳命である。事実上の対日担当責任者であるエルブリッジ・コルビー国防次官は、自身の著作では防衛費の対GDP比3%を求めていたが、国防次官になってみると、第二次ドナルド・トランプ政権の意向は3.5%であり、最近では5%となっている。高市政権はこの5%を達成したい。日本のGDPは約600兆円なので、5%は30兆円となる。2025年度の予算約115兆円のうち、社会保障関係が約38兆3000億円で、約33.2%で、分野別としては最大だ。次は防衛関係で約8兆7000億円、約7.5%である。防衛予算が30兆円となれば、4倍弱、20兆円以上の増加となる。

 20兆円も増加するとなれば、他の分野を削ってもなかなか厳しい。現在でもかつかつでやっているのが現状だ。少子高齢社会(少子高齢「化」社会の段階はとうに過ぎている)で社会保障関係は増大していく。そうなれば、国債発行か増税ということになる。日本では、既に、税金と社会保障の負担率が5割に迫っている。その割にその恩恵を感じられていないことに国民間で潜在的な不満が高まっている。しかし、20兆円をどうやってねん出するかとなれば、国債発行か、増税しかない。高市政権を支持した国民にだけ20兆円を負担してもらうということもできない。やはり国民全体で負担を負うしかない。国債発行となれば、インフレや金利上昇のリスクは高まる。増税となれば、国民の不満は増加する。いくら「中国が気に入らない、やっつけろ」と言ってみても、税金でお金を吸い上げられ続けて、手許にお金が残らなければ生活もできない。

 改憲に関しては、ありがたいことに、衆参両院で3分の2以上の賛成で発議され、国民投票という手続きになっている。現在の参議院は、自民維新国民参政保守チーム未来保守などの改憲、憲法9条の条文変更を行うことに進みそうな勢力がギリギリで3分の2という状況だ。これだけのグループであれば意向の違いややる気に濃淡があるので、一気に憲法改正の発議まで進むのは難しいだろう。次の参議院議員選挙は2028年で、ここで憲法改正の発議を阻止できる、護憲勢力を3分の1以上にすることが重要だ。高市政権は20230年の衆議院議員の任期の最後まで総選挙はやらないと考えると、2028年の参議院選挙が重要だ。
 
 しかし、その前に高市政権が苦境に陥るということも可能性としてある。高市首相がやりたいことをやろうとすれば財政規模は拡大してしまう。何より防衛費が10兆円、20兆円と倍々ゲームで増えていく。増税か、国債発行か、どちらにしても良い結果には結びつかない。円安やインフレが進行する。あれだけ「早苗ちゃん、頑張っている」「何か変えてくれる」と熱狂した国民は、高市早苗真理教の熱心な信者以外は離れていく。「生活が苦しいのは中国のせいだ」とばかりも言っていられなくなる。それで、皆で口を拭って、知らんぷりして「私は最初から高市という人を評価していなかった」と言い出す。高市首相の個人的な人気に支えられた自民党の議席は、決して盤石ではない。高市人気の終焉の時に、逆回転が起きる。そのことが分かっている自民党幹部たちほど、今回の大勝利に浮かれていない。しかし、何とかしようにもなかなか厳しい状況が続く。
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