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2007-12-11 10:09

軽佻浮薄な民放ニュース番組

杉浦正章  政治評論家
 テレビ朝日の「報道ステーション」が既に辞めた女性に制服を着せてマクドナルドの調理日改ざんを証言させていた問題は、民放報道番組の質の低さを改めて浮き彫りにした。ニュース報道番組を視聴率獲得のための娯楽番組と全く同じ発想で作っている。公共の電波を使ってやりたい放題、虚報、誤報、判断間違いで「風評源」ともなっている。朝の情報番組にしても、報道のプロならコメンテーター等の発言を「また与太情報をしゃべっている」と見分けるが、一般視聴者はそれができない。「ワイドショー的」といえば軽薄な報道を象徴する言葉となっているが、司会やコメンテーター等の横柄さも目立ち、視聴者に不快感を与えるケースも多い。

 連立をめぐる福田・小沢党首会談の際、「野次馬プラス」のコメンテーターはパネルに「解散」と大書きして「解散が話し合われる」と興奮していたが、全くの与太情報。額賀証人喚問問題でも同番組のコメンテーター等からは「疑獄事件」という発言を何度聞いたことか。この種の情報番組の致命的とも言える欠陥は、情報チェック機能が働かないことだ。一流の報道機関なら「解散だ」と駆け出し記者が持ってきた情報は、キャップが「アホか」と言って止める。デスクもチェックする、整理部でもチェックする。何重もの関門を経てやっとパスする。それが、報道に当たる者の良心だからだ。民放報道番組は駆け出し記者も、与太専門記者も直接茶の間に報告してしまう。まさに与太情報が茶の間に直結する状態である。

 「みのもんたの朝ズバッ!」でも、みのもんたが2006年7月5日の北朝鮮のミサイル発射の際、マジックで弾道を北海道沿岸にまで達せさせてしまった。これを見たコメンテーターはなんと「宣戦布告だ」と息巻いた。公共の放送で戦争を開始させてしまってはいけない。どんな不測の事態に発展するか分からないからだ。不二家に賞味期限切れ問題で「廃業してもらいたい」とまで批判したみのもんたは、全くの事実無根であったことが分かり、「スタジオのお菓子は不二家にします」と発言した。あまりに軽いのである。こうした情報番組や日曜日のワイドショーに、政治家が尻尾を振るように出演する。出演して「私は高級議員宿舎には入りません」と媚びを売る。番組側はますます増長して、政局を自分が動かしていると錯覚する。まさにポピュリズムの悪循環が生じている。

 米CBSの優秀なアンカーマンだったダン・ラザーは、ブッシュ大統領の兵役逃れを告発した報道が、虚偽の書類を元にした誤報であったことを批判され降板した。たった一つの間違いで視聴者から24年間愛されたイヴニング・ニュースから降ろされ、断腸の思いで去ったのである。同じ民間放送でも、米国の場合いい加減なことを言おうものなら、テレビ局の電話が焼き切れるほどの抗議が殺到する。訴訟にも発展する。したがって報道する側のニュースへの対応が日本の民放のそれとは月とすっぽんほど異なる。文字は証拠が残るが、電波は聞き捨てになる。そこから安易な情報伝達が野放しになっている形だ。風聞の発生源にもなるわけである。反省もないまま報道番組を作り続ければ、報道全体の信用失墜となる。
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