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2025-09-09 09:11

石破首相退陣は「自民党崩壊」の兆しか

鍋嶋 敬三 評論家
 石破茂首相(自民党総裁)が2025年9月7日、退陣を表明した。8日の総裁選挙前倒しの是非を決める日程を前にしてだった。突然の辞意の背景は(1)「石破下ろし」に走る党内の前倒し要求が広がりを見せ、党の分断が避けられないと判断した(2)衆参とも少数与党で重要政策の与野党協議が進まず国政の停滞が長引いた(3)衆院解散も模索したものの党内の反発が強く、多数派回復の展望が開ける見込みも全く立たないーなどである。岸田文雄内閣が総裁選不出馬で退陣した後を受けて24年10月1日に成立した石破内閣だが、総裁の任期(3年)を全うできずにわずか1年で退陣に追い込まれた。

 自民党内は次期総裁選挙に向けて早くも走り出した。前回も争った茂木敏充前幹事長は8日に立候補を表明した。熾烈な争いを繰り広げた高木早苗前経済安全保障担当相や小泉進次郎農林水産相、林芳正官房長官らが加わり多数派工作が展開されるだろう。総裁選挙は国会議員に党員・党友が加わる「フルスペック方式」で10月4日に実施する方向で調整されている。自民党内は麻生派以外は派閥を解散したが、旧派閥を軸に総裁選に向けた動きも伝えられる。自民党の大敗の原因の一つが派閥中心の「政治とカネ」を巡る不祥事であり、現・旧派閥を軸とする多数派工作は許されない。それがまたもやまかり通るようなら、衆参両院とも少数与党に転落してもなお反省していない証拠だ。

 自民党執行部は9月2日に参院選の大敗を総括する報告書を決め、両院議員総会で示した。敗因として自民党の基礎体力の低下を挙げ、自民離れの原因として「政治とカネ」の問題で国民の信頼を失ったことを挙げた。旧安倍派など派閥単位でパーティー券売り上げの還流など政治資金の不記載事件が大きな問題になったからである。総括では、改善策として自民党らしい「国家ビジョンや党の立ち位置の明確化」などを明記した。2022年以降の国政選挙で自民党は比例代表で毎回得票を減らしてきた。この間に500万票以上も減ったのは、既成政党に飽き足らない新興勢力に本来の保守層が移動したためと分析されている。

 さらに総括では「党の再生への誓い」として、「解党的出直し」を掲げ「保守の思想を体現する党として存在意義を示す」決意を示して「真の国民政党に生まれ変わる」と宣言した。菅義偉元首相がかつて短命内閣が続き野党への政権交代が起きた歴史から自民党政権の将来を危惧する発言をしたと記憶する。石破政権でも野党の要求を次々受け入れて政策立案に混乱を招いた経緯があった。野党の要求を「丸呑み」して財政規律が崩れる恐れは強い。2026年度(令和8年度)予算概算要求でも122兆円を突破する勢いだ。このままでは日本は国家破綻する。石破政権の退陣は結党70周年を迎えた国民政党を標榜する自民党本体の崩壊の兆しではないのかと危惧する。自民党を沈没の危機から救い出せるのか、新総裁の真の力量が問われる。
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