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2025-07-22 08:34

「集団的自衛権」認めぬ立憲民主党で日本を守れるか?

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 立憲民主党の安保政策は、「日米安保を基軸とし、専守防衛に徹し、防衛力を整備する」(2024年同党安保政策集)というものであるが、米国との集団的自衛権については「違憲部分を廃止する」というのみであり、具体的に違憲部分を一切明らかにしていない。野田代表は先般の日本記者クラブでの参議院選党首討論でも石破首相の追及に対し、最後まで違憲部分を明らかにせず、政権を取ってから米国とも協議して検討すると述べていた。
 
 立憲民主党は、もともと2015年に自民党安倍政権が憲法解釈を変更して成立させた米国との「集団的自衛権」には強く反対した。反対の理由は、日本が攻撃されていないのに米国の戦争に軍事的に協力する集団的自衛権は米国の戦争に巻き込まれ、専守防衛の憲法9条に違反し許されないというものである。そして、安保法制の「重要影響事態」「存立危機事態」「武力攻撃事態」では集団的自衛権ではなく個別的自衛権で対処できると主張してきた。2015年当時、同党は安保法制が成立すれば日本は徴兵制になると国民に宣伝した。要するに、立憲民主党は「違憲部分を廃止する」と言っているが、「違憲部分」を一切明らかにせず、米国との集団的自衛権全体すなわち安保法制全体を憲法9条違反(立憲主義違反)として今も認めないのであり、これは国政選挙で選挙協力を得るための共産党への配慮でもあると言えよう。
 
 問題は、立憲民主党のいう「個別的自衛権」だけで日本を守れるか、ということである。例えば、中国による「尖閣有事」すなわち中国軍が尖閣諸島に上陸し占拠した場合に、日本の自衛隊だけで尖閣諸島を奪い返すことが出来るかということである。まさに安保法制にある「重要影響事態」「存立危機事態」「武力攻撃事態」である。この場合、日本と核を保有する中国の軍事力を比較すれば、日本自衛隊のみで尖閣諸島を奪い返すことは困難であり、安保法制に基づき米国との集団的自衛権の行使が必要と言えよう。すなわち、個別的自衛権だけでは尖閣諸島を含め日本を守ることは困難である。
 
 そうだとすれば、日本の平和と独立を守るためには、米国との集団的自衛権が必要であり、「違憲部分を廃止する」と称して「違憲部分」を一切明らかにせず、米国との集団的自衛権を認めない立憲民主党の安保政策では、尖閣諸島を含め日本を守れないと言えよう。さらに言えば、安保法制に基づく米国との「集団的自衛権」自体が中国や北朝鮮、ロシアに対する強力な「抑止力」となっているのである。「集団的自衛権」は国連憲章51条で認められている。
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