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2025-07-22 08:30

「寿命が尽きた」自民党

鍋嶋 敬三 評論家
 今年結党70周年を迎える自由民主党の寿命が尽きたということではないか。2025年7月20日投開票の第27回参院選挙で大幅に議席を減らし、自民・公明連立政権は衆参両院で少数与党となった。1955年の自民立党以来、同党中心の政権が両院で少数与党に陥るのは初めてである。旧社会党は離合集散の果てに消滅したが、「55年体制」はこれで名実ともに終焉を迎えることになるだろう。自民は改選議席50に対し39議席にとどまった。次の参院選では改選は62議席もあり、今回の結果から見ると現状維持すら極めて困難だろう。この選挙結果は国民の政治意識の劇的な変化を反映したものだ。第一にそれは組織選挙を重視する既成政党への支持が離れたということである。共同通信社による出口調査によれば、比例代表で自民党支持層の自民党への投票は2019年以来3年毎に83%→79%→73%、また公明党では支持層の93%→91%→89%と着実に低下、岩盤支持層がこの6年間で離れていったである。

 第二に年代別でも社会活動の担い手になる中軸世代の支持離れが顕著だ。自民、公明の与党も立憲民主党、共産党、社民党の野党も70歳代以上が最高という。既成政党と対照的なのが新興勢力で日本維新の会、国民民主党、参政党、れいわ新撰組、日本保守党などの政党では20~50歳代の比率が最高で、参政の最高は選挙権を得て間もない18、19歳だったという。このことが示しているのは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)など情報伝達手段の新たな手法の普及とともに、手あかのついた既成政党の主張に魅力を感じなくなったことが主な原因であろう。

 石破茂首相は7月21日の記者会見で敗北を認め「国民の厳しい審判を頂いた」と言いながら、「国政に停滞がないよう責任を果たす」と続投を宣言した。自ら認めるように「これから先はいばらの道」であることも認めた。参院選挙は本来政権選択の選挙ではないが、昨年10月の衆院総選挙で自民、公明の与党が単独過半数を割り少数与党に転落した。旧民主党政権への交代が起きた2009年以来のことである。今回の参院選敗北で自公連立には任せられないとの国民の審判が下ったのは明白だ。衆参両院選挙の敗北でも責任を取らない姿勢は国民の理解を得られないだろう。石破政権は政策ごとに野党の一部を取り込んで合意を目指す「部分連合」で政局を乗り切ろうとするだろうが、数多い新興勢力と合意を取り付けるには多大な政治的エネルギーと時間を要する。「財源措置は与党の責任」と逃げを打つ野党の要求を丸呑みにする危険が常にある。国会運営で右往左往し政局が混迷して、日本の対外的な信用と交渉力を落とすばかりだろう。

 3年前の参院選挙で自民党が大勝し憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会の発議に必要な3分の2以上の議席を獲得して自公連立政権は「黄金の3年」を手に入れたとはやされたが、それもつかの間、「幻」と消えた。改憲どころではない。「政局混迷」の一言では片付けられない暗闇に中で手探りの時代に入ったのだ。世界は第二次大戦後の国際秩序が破壊されつつある変化の激しい時代に突入している。右から左まで様々な政治傾向と利益集団(つまり圧力団体)を包み込んできたこれまでの自民党という政権政党は古い体質のまま存続できるのだろうか?支持組織も含めいったん徹底的に解体し、新しい勢力も積極的に参加させて「筋の通った保守政党」を再構築するしか、新生への道は開かれないのではないか?
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