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2025-07-02 01:13

日本共産党は構造改革し「日本民主党」に改名を!

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 日本共産党の党勢が長期衰退している。党員数の減少が止まらず、党員の平均年齢も高齢化し、機関紙赤旗の発行部数も減少している。党員数は30万人を割り、赤旗も100万部前後に減少した。これらは国政選挙の得票数や党財政にも影響する。昨年の衆議院選では比例得票数は300万票台にまで落ち込み、先般の都議選でも、当選者数が19名から14名に後退した。

 党勢衰退の歴史的社会的背景は、日本をはじめ先進資本主義諸国における資本主義の発達・高度化が最大の原因である。すなわち、資本主義の発達・高度化により、マルクスの主著「資本論」やエンゲルスとの共著「共産党宣言」で予言した労働者階級の窮乏化が起こらなかった。むしろ、先進資本主義国では労働者の名目賃金が不断に上昇、生活水準が向上し、社会保障制度が整備されたこと、不断の技術革新により専門的・技術的就労者(中間層)が増え階級闘争意識が希薄になったこと、先進国では暴力による社会主義革命ではなく、選挙による政権交代のみを認める議会制民主主義制度が定着していること…などが指摘できる。このように、資本主義の発達・高度化による生活水準の向上により、もはや労働者階級は、「革命においては鉄鎖以外に失うべき何物も持たない」(マルクス・エンゲルス著「共産党宣言」)とか「賃金奴隷である」(レーニン著「国家と革命」)などとは到底言えないことは明らかである。

 このような党勢衰退の歴史的社会的背景を考えると、労働者階級を含む国民の大多数が、「自由と民主主義」を享受する現存の資本主義体制を打倒し、「プロレタリアート独裁」(共産党一党独裁)を不可欠とする「社会主義・共産主義社会」の実現を待望する社会的必然性はない。
それにもかかわらず、日本共産党は、いまだに「科学的社会主義」(マルクス・レーニン主義)に基づき「社会主義・共産主義社会」の実現を目指すことを宣言している(党規約2条。党綱領五=15)。その方法として、共産党は「多数者革命論」(党綱領四=13。上田耕一郎著「現代日本と社会主義への道」)を掲げるが、他方において「プロレタリアート独裁」(党綱領四=16「社会主義をめざす権力」)を放棄せずに温存している。不破哲三氏(共産党前議長)も「社会主義日本では労働者階級の権力、即ちプロレタリアート独裁が樹立されねばならない」(不破哲三著「人民的議会主義」)と断言している。「プロレタリアート独裁」は、日本共産党の指導原理である科学的社会主義(マルクス・レーニン主義)の核心であり、資本主義から共産主義への過渡期の国家がプロレタリアート独裁である(マルクス著「ゴーダ綱領批判」)。そこでは、反革命勢力や反革命分子に対する法律によらない暴力による容赦のない弾圧殺戮が正当化されるのである(レーニン著「国家と革命」、スターリン著「レーニン主義の基礎」)。このような「プロレタリアート独裁」(共産党一党独裁)が日本など先進資本主義諸国における「自由民主主義体制」と矛盾し根本的に対立することは明白であり、今や時代錯誤と言っても過言ではない。

 このため、「プロレタリアート独裁」を不可欠とする共産主義イデオロギー(マルクス・レーニン主義)を掲げていた西欧先進資本主義諸国の多くの共産党は衰退した。「プロレタリアート独裁」を放棄し、イタリア共産党は解党して左翼民主党になり、フランス共産党、スウエーデン共産党、イギリス共産党も「プロレタリアート独裁」を放棄した。スペイン共産党は弱体化した。オランダ共産党やフィンランド共産党は自主的に解散した。旧西ドイツ共産党は1956年に非合法化され、アメリカ共産党は1954年の共産主義者取締法により非合法化された。これらの西欧先進諸国の共産党は、たとえ存続したとしても、著しく衰退し、その政治的影響力はいずれも極めて微々たるものとなっている。

 以上に述べた通り、共産党の衰退は何も日本共産党だけではないことが明らかである。これらの共産党の共通点はいずれも高度に発達した先進資本主義諸国の共産党であることである。したがって、前述した理由により、今後も資本主義が発達し高度化すればするほど、共産党の衰退は避けられず、これは歴史的必然であると言えよう。共産党がこれを克服するためには、理念として、何よりも「自由と民主主義」に根本的に矛盾する「プロレタリアート独裁」(共産党一党独裁)の概念を放棄すること、暴力革命の手段としての「敵の出方論」(不破哲三著「人民的議会主義」)を放棄すること、党最高幹部への権力集中と独裁をもたらす「民主集中制」(党規約3条)を放棄することである。共産党は、このような根本的な構造改革を行い、社会民主主義政党に脱皮し、党名もそれにふさわしい「日本民主党」に改名すべきである。そして、具体的政策としても、日本共産党改め「日本民主党」は、日本の安全保障に必要不可欠な抑止力である日米安保と自衛隊を認め、大企業敵視政策を改め、日本経済の成長発展に必要不可欠な企業の技術革新と生産性向上を認め、日本の国際競争力強化を認める必要がある。リニア中央新幹線建設反対や半導体企業への政府資金投入反対等、日本経済の構造改革や日本経済の成長発展を阻止してはならないのである。このような根本的な構造改革により、日本共産党改め「日本民主党」は国民の支持を拡大し、政権参加へも道も開けるであろう。
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