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2025-06-07 17:24

日本学術会議は日本を守る「軍事研究」を認めよ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 日本学術会議を現行の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる新たな日本学術会議法が2025年6月11日、参議院本会議で自民、公明両党や日本維新の会などの賛成多数で可決成立した。新法人は2026年10月に発足する。同法の内容は、「これまでは学術会議が自主的に会員候補者を推薦して首相が任命していたが、これからは、首相が決めた外部有識者2名と会長が協議して選んだ委員10名~20名が会員候補者を選ぶ。以後も外部有識者が会員選考に意見を述べる。さらに、首相任命の監事や評価委員が学術会議の活動を監理・評価する。」(「毎日新聞」2025年5月29日)ものである。年間約10億円程度だった予算は引き続き必要と認める金額を補助するとしている。同法に対し、日本共産党や左翼系学者らは日本学術会議の独立性や自主性が損なわれ、政府や財界言いなりの軍事研究への道を切り開くものであり「学問の自由」を奪う危険な内容だとして強い反対運動を行っていた(「赤旗」2025年5月14日)。

 同法の背景には学術会議による「軍事研究」禁止方針をめぐる自民党政府との対立がある。2015年、防衛装備庁は全国の大学などを対象に軍事研究を公募・委託する「安全保障技術研究推進制度」を発足させた。これに対し、2017年、学術会議は軍事研究を禁止する声明を出した。このため、多くの大学が公募に応じない方針を決定した。

 言うまでもなく日本は独立国家である。独立国家である限り、外敵から日本の平和と独立並びに1億2000万国民の生命・財産・安全を守らなければならない。このことに学術会議も全く異論はないであろう。しかし、核兵器を含め、現代の弾道ミサイル技術やミサイル防衛技術をはじめとする軍事技術は極めて高度化し日進月歩である。とりわけ、周辺国である中国、ロシア、北朝鮮の核を含む軍事力は拡大の一途をたどっている。ロシアのウクライナ侵略、中国による台湾有事、尖閣有事の危険性、北朝鮮による核ミサイル開発の危険性等を考えれば、日本もこれらの国の攻撃から国と国民を守るための「抑止力」を持たらずを得ないことは自明である。持たなければ、侵略を誘発する極めて危険な「力の真空状態」が生ずるからである(小泉信三著「私の平和論について」小泉信三全集10巻463頁)。日本共産党が主張する軍事力・抑止力を否定した「平和外交」だけでは「力の真空状態」が生じ、到底侵略を抑止できないことは、ロシアによるウクライナ侵略が証明している。

 日本学術会議は日本の存立を前提とする日本国民のための機関である。そうだとすれば、日本学術会議は、日本の存立に必要不可欠な「最先端ミサイル防衛技術」「最先端偵察衛星技術」「最先端ミサイル技術」「最先端レーダー技術」「最先端無人航空機技術」「最先端ドローン技術」「最先端潜水艦技術」「最先端電磁波技術」「最先端レーザー技術」「最先端レールガン技術」「最先端宇宙空間技術」「最先端サイバー技術」「最先端ロボット技術」「最先端ロケット技術」をはじめとする日本が誇る世界最先端の、日本の抑止力を画期的に向上させる自衛のための「軍事研究」の自由を認めるべきである。現代は「軍民両用」(デュアルユース)の時代であるからなおさらのことである。日本共産党は軍事研究は戦争国家への道であるなどと批判するが、現在の日本は戦前とは全く異なり、高度に発達した国民主権の自由民主主義国家であり、文民統制(シビリアンコントロール)が確立している。これらの事実を無視し、自衛隊解消、安保廃棄を主張する共産党の上記批判は理不尽である。
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