国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2025-03-14 16:48

(連載1)台湾統一をめぐる習近平政権の野望と日本

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 今回は「台湾統一をめぐる習近平政権の野望と日本」と題して、見解を述べる。今まで「台湾有事は日本の有事」としてきた内容を中国は公然と批判してきているのに対し、アメリカのトランプ政権は、日本に防衛費の増強を求めてきているということ、一方で台湾の独立に関してはそれを認めるというような形になっており、徐々に日本を取り巻く東アジアの環境が大きく変化するというような状況になっているが、なぜか日本の報道に関しては、「憲法9条」とか「国会での政局」というようなことばかりを中心に報じているような気がしてならない。本来我々が見なければならないのは、永田町の国会の中の政局ではなく、世界規模の大きな政治の変化、または分断の社会ということを考えなければならないのだが、日本の報道空間にはそのような危機感は全くないということが大きな問題なのではないか。

 さて、まずは台湾というのがどのような存在なのかを考えてみたい。そもそも台湾は、少なくとも大陸の王朝が「明」と言っている時代までは「化外の地」つまり「お化けの世界(要するに人知の及ばない世界)のもっと外側の地」というような場所であった。それが清代になり、アヘン戦争など海からの外国勢力の進出があったことからにわかに、台湾が重要視されるようになる。そして暫くは清国の支配にあったが日清戦争時の下関講和条約において、日本の支配になった。この日本の支配になるにあたっての台湾での日本軍との戦いは、私が上梓した「我、台湾島民に捧ぐ 日台関係秘話」という本に書いている。そして大戦後、日本はサンフランシスコ講和条約で台湾と朝鮮の支配権を放棄することになった。

 ちなみに、この支配権の放棄は、中国に支配権を渡すというものではない。その頃中国に国共内戦があり敗北した国民党がそのまま台湾を占領した。はっきり言ってしまえば、中国共産党の支配に服したわけではない。しかし、中国の一部として内戦状態に巻き込まれたような形になっているのである。そもそも国民党と共産党を「内戦」とすれば「一つの中国」ということになり、「まったくの別政権で国家として分離する」というように考えれば台湾は国民党が支配した瞬間に台湾は独立しているということになる。

 歴史的に、中国との対立を避けるというか、実際には中国と戦うことに意味を持たなかったアメリカは、いわゆるニクソンショックで米中間で国交を回復し、いわゆる「一つの中国」を認めた。田中角栄も同様に一つの中国を認め、台湾と中国を一つの中国とした解釈を認めるとしている。しかし、アメリカはなかなか巧妙で、その公式文書の中には「中華人民共和国が台湾を含めた一つの中国という概念を持っていることを認める」と記載されている。トランプ大統領はその公式文書のまま解釈をしており、台湾の独立を認めるということを暗に示している。いや、正確に言えば台湾の独立を支持しないという単語を公式文書から消したのである。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム