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2025-01-25 10:47

『核禁条約』加入で日本を守れるか?

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 長年、核廃絶運動を展開してきた「日本原水爆被害者団体協議会」が昨年度のノーベル平和賞を受賞したことを契機に、広島・長崎の被爆者団体や日本共産党などが、日本政府に対し「核禁条約」への早期の署名と批准を求める運動を活発化させている。その主たる理由は、世界で唯一の「戦争被爆国」である日本は、核兵器廃絶を目指す「核禁条約」に速やかに加入し、核廃絶へ世界をリードすべきだ、というものである。

 「核禁条約」では、平和利用を除き、核兵器の開発・実験・生産・製造・取得・占有・委譲と受領・使用・威嚇・配備などが禁止され、法的拘束力がある。「日米同盟」に基づく『核の傘』は、上記の禁止事項のうちのいずれかに該当する可能性がある限り「核禁条約」違反となりうる。すなわち、『核の傘』は「核禁条約」と矛盾する可能性を否定できないのである。

 「日米同盟」の最重要な核心は『核の傘』である。なぜなら、日本は核兵器を保有していないため、核保有国である中国・北朝鮮・ロシアによる核攻撃や核恫喝を抑止するためには、「日米同盟」による『核の傘』の抑止力に依存せざるを得ないからである。すなわち、これらの国が日本に対して核攻撃をすれば、米国の核による反撃を受けることで、核攻撃を防止する抑止力となっているのである。しかし、上記の通り、『核の傘』は「核禁条約」と矛盾する可能性があるから、日本が「核禁条約」に加入すれば、「日米同盟」の核心である『核の傘』を失う危険性がある。

 日本共産党などの「核禁条約」加入勢力は、加入後の日本の安全保障や核抑止について、国民が安心できる具体的な対策を一切示していない。ひたすら、米国を敵視する「反米反戦」「大軍拡反対」のイデオロギーに基づき、「日米同盟」に反対し、米国の『核の傘』を全面否定し、「平和外交」を唱えるのみである。共産党のみならず、広島・長崎の被爆者諸団体も同じであり、「核禁条約」加入後の日本の安全保障や核抑止について、国民が安心できる具体的な対策を示していない。そうすると、「核禁条約」加入は「日米同盟」の最重要な核心である『核の傘』を喪失して無防備となり、核保有国である中国・北朝鮮・ロシアによる核攻撃から日本を守れない危険性が大きくなる。日本及び日本国民を守るためには、核廃絶の理想と核抑止の現実を決して混同してはならないのである。
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