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2024-07-23 08:54

第三次世界大戦・核戦争前夜の雰囲気

舛添 要一 国際政治学者
 ウクライナ戦争も中東での戦闘も、終わる兆しはない。戦争は、物価高など人々の生活への悪影響を拡大させており、先の欧州議会選挙でも極右が勢力を伸ばした。実戦配備される核兵器の数も増えており、世界は、第三次世界大戦へとシフトしつつあるのではないか。
 
 ロシアがウクライナに軍事侵攻したことは、日本もウクライナと同様な事態に直面するかもしれないという危機感を日本国民に与えている。何よりも台湾と目と鼻の先にある沖縄県そのものを外敵の侵入から守るために、自衛隊や米軍の存在が不可欠となっている。陸上自衛隊は、2016年に与那国駐屯地、2019年には宮古島駐屯地、2023年には石垣駐屯地を開設している。宮古島と石垣島には地対艦、地対空のミサイル部隊が配備され、与那国にも電子戦部隊とミサイル部隊が追加配備される。
 
 第二次世界大戦後、ヨーロッパの大国間では80年近く平和が続いてきた。東西で対立した米ソ冷戦時代にはNATOとワルシャワ機構軍の間で軍備競争が行われた。しかし、1989年秋のベルリンの壁崩壊、1991年のソ連邦の崩壊で、すっかり雪解け状態となり、軍備縮小が進んだ。ところが、それから30年後、2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻した。NATOはウクライナを全面的に支援し、事実上の代理戦争となっている。バルト三国をはじめ、ソ連・ロシアによって攻撃され、併呑された歴史を持つ東欧諸国にとっては、悪夢の再来を避けるために、自らの軍備を拡充するのみならず、NATOの結束を固める必要性を再認識している。
 
 ポーランドは、2023年の国防予算をGDPの4%に引き上げた。それは、東欧諸国のみならず、ドイツやフランスという西欧の大国についても同じである。ドイツは、東西冷戦時代の西ドイツの時代には50万人の兵力を有していたが、今は18万人にまで減っている。さらには、ロシアの核による威嚇を前にして、ショルツ政権は核抑止を重視する姿勢に転換した。NATOの非核保有国であるドイツ、オランダ、ベルギー、イタリア、トルコは自国内にアメリカの核兵器を持ち込み、ソ連・ロシアからの核攻撃に備えてきた。これがNATOの核共有政策である。
 
 ドイツでは、男性の兵役を義務とした徴兵制は2011年に停止されたが、その復活も議論されるようになっている。ピストリウス国防相は、予備役を含めると24万人の兵力を46万人にまで引き上げる必要があるとしている。フランスのマクロン大統領は、2024〜2030年の7年間の国防費を4000億ユーロ(約55兆5000億円)にすることを決めたが、これは2019〜2025年の2950億ユーロ(約41兆円)の3割増しである。欧州は軍拡の時代に入ったと言える。
 
 6月17日、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、『年次報告書2024』を公表し、実戦配備済みの核弾頭数が3904発となり、昨年よりも60発増えたという。核弾頭の保有数は、ロシアが5580発、アメリカが5044発であるが、中国が核兵器開発を加速化させていることに注意を促している。今の中国は500発の核弾頭を保有しているが、10年後には、米露と並ぶ数のICBM(大陸間弾道弾)を保有するだろうとしている。核戦争の危機もまた深まりつつある。
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