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2007-11-26 22:46

連載投稿(1)来年は日本にとって「アフリカ年」

太田正利  元駐南アフリカ大使・元杏林大学教授
 来年は日本にとって「アフリカ年」である。洞爺湖サミットやTICAD-Ⅳ(第4回アフリカ開発に関する東京会議)も開催される。アフリカ支援が日本外交の大きな焦点になるが、日本ではTICADと言っても知らない人の方が多いのではないか。TICAD第1回会議は、1993年10月5~6日にアフリカ諸国48、援助国12、EC、国際機関及びオブザーヴァーを含む約1000人が参加する大会議として東京で開催された。ここで採択された「東京宣言」で、アフリカ諸国の自助努力と開発パートナーの支援に基づく持続可能な開発に向けて「新たなパートナーシップ」を強化することがうたわれた。この会議のフォローアップも行われ、これが来年の会議に繋がっている。そもそも、TICADは国際場裏(特にアフリカ)で「受け身」勝ちだったわが国がイニシャティヴを執ったもので、「東京」が強調されていることからも窺える筈だ。筆者が南アに在勤中だった際の日本による経済制裁解除や外交関係復活などに対し、アフリカ諸国の反発をも予想して、わが国のアフリカ重視の姿勢を明確に示す目的もあったようだ。

 ところで、アフリカは日本人には馴染みが比較的薄かった。アフリカと言っても広うござんす。地理的環境の他に歴史的事情もある。「アフリカは一つ」ではないのだ。ここに筆者が熟知している南部アフリカの日本にとっての重要性を挙げてみたい。バルトローメ・ディアス、ヴァスコダ・ガマ(2人ともポルトガル人)が喜望峰に到着していたのは1400年末のことだが、それより遅れること150年、オランダのヤン・ファン・リーベックがケープタウンに基地を開いたのがケープ植民地(現在の南アフリカ共和国)の始めだった。ここで指摘しておきたいのは、リーベックの前任地は長崎の「出島」だったのだ。大げさに言えば、ここが日・南ア関係史の序章だった。

 南アフリカは気候温暖(これがアフリカかと日本人が驚く程で、真夏服は不要。冷房は「あれば」便利、暖房は「必須」)、比較的に温和な住民を持ち、政情も概して安定しており、食糧始め農産物の輸出国である。インド洋と大西洋のシーレインを扼すという地政学的地位を占めている。これをバックアップするのが世界に冠たる鉱物資源、特に希少金属の世界1、2位の生産国である。曰くプラチナ、クロム、マンガン、パラジウム、パナジウム、ジロコニウム等。金、ダイアモンド、鉄鋼石、石炭、ウランについては世界の常識になっている。筆者も現役時代、これら鉱山に潜った記憶がある。何事も実体験だ。

 日本はこれら鉱石の最大輸入国であるが、南ア側では「単に鉱石を輸出するだけでなく、国内で加工する過程を導入したい。この面で、特に日本の資本・技術に頼りたい」と最近訪日した南アの鉱物・エネルギー大臣のソンジカ女史が筆者に話していた。なお、最近甘利経産大臣一行の南ア、ボツアナ訪問があり、日・南ア両国政府はレアメタル鉱山の共同開発に合意するなど、中国などに遅れをとったのをとりかえさむとの意気込みを感ずる。(つづく)
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