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2024-04-30 22:41

蔓延する人々の不安を煽る主張

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻が起きて以来、人々の不安を煽る主張が多く出ている。「ロシアはウクライナの次として●●(バルト三国や隣接している国々の名前が入る)を狙っている、攻める」とか、「ウクライナの次は台湾だ(中国がロシアの成功を見て台湾侵攻を行う)」といった主張がなされてきた。「ロシアのプーティンも中国の習近平も共に独裁者で、自分たちの思うとおりに軍隊を動かして、他国を攻める」「ロシアも中国も膨張主義(expansionism)だ」という粗雑な、浅はかな考えが基本になっている。プーティンも習近平も、こうした浅はかな主張をする人間たちよりも、はるかに頭が良く、自分の欲望だけで何かをするという次元の人間ではない。また、ロシアも中国も国土に関して野心を持っていない。
 
 プーティンのウクライナ侵攻の原因をきちんと精査し、分析し、合理的な判断もしないで、粗雑な前提で、「攻めてくる、攻めてくる」と騒ぎ立てるのは、人々の不安を煽って、自分の金儲けに使おう、商売にしようというさもしい根性から出ている。独裁者だから連続してどんどん侵略するということはない。ヒトラーやナポレオンがいるではないか、という声も出るだろうが、独裁者が全員、ヒトラーやナポレオンのような行動を取った訳ではない。

 プーティンが独裁者だから必ず、ウクライナ以外にも侵略戦争を仕掛けるというのは粗雑な考えであり、プーティンがどうしてウクライナに侵攻したのか(2014年の時も含めて)を考えるならば、NATOの拡大が理由として挙げられる。NATOとは対ソ連、今では対ロシア軍事同盟だ。ロシアの側か見れば、それがどんどん東側に拡大して、自国に迫ってくる。東欧諸国やバルト三国が加盟してNATOと隣接することになる。それでもロシアは自制した。しかし、ウクライナはロシアにとっては喉首のような場所であり、NATO拡大は看過できない(EU加盟には賛成している)。こうして考えると、西側諸国がロシアの意向を無視して、ロシアを煽ったということになる。ロシアは乾坤一擲、ウクライナを抑えた。それ以上のことをする意図はない。

 これは中国にも言えることで、台湾が現状のままならば、わざわざ侵攻することはない。既に両岸関係は緊密に絡まり合って、経済的には一蓮托生の状態になっている。アメリカをはじめとする西側諸国が余計なことをしなければ、そのままの状態で、経済が発展していく。西側諸国という存在が世界にとって大いなる邪魔者になっているということを私たちは良く考えねばならない。そして、過度に単純化された、不安を煽る言説に惑わされてはいけない。
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