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2022-06-14 19:43

ロシア軍とウクライナ軍の戦闘、長期化の恐れも

飯島 一孝 ジャーナリスト
 ロシア軍がウクライナへ侵攻してから100日を越えたが、依然として停戦の見通しが立たず、ウクライナ東部のドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州一帯)の支配圏を巡って激戦が続いている。ロシア軍は首都キーウ(キエフ)などウクライナ北部から撤収した後、東部に戦力を集中し、ルガンスク州の重要都市セベロドネツク周辺などでウクライナ軍に集中的な砲撃を加えて徐々に支配地域を広げている。ウクライナのゼレンスキー大統領は演説の中で「この戦いにドンバス地方の命運がかかっている」と強調した。
 
 一方、プーチン露大統領は6月12日、自国の祝日「ロシアの日」にちなんだ式典で演説。1721年のスウェーデンとの北方戦争に勝利し、大国の基礎を築いた帝政ロシアのピョートル大帝に言及し、「先人たちの偉業や軍功は我々にとって誇りだ」と述べ、ウクライナ侵攻を改めて正当化した。プーチン氏については、西側諸国などから重病説が流れているが、それを身をもって否定し、ロシア国民を鼓舞したといえる。
 
 では、今後戦闘はどうなって行くのだろうか。ドイツのシュルツ首相は、ロシアが今後、軍事力を維持することは不可能になるとの見方を示した。その理由として、西側諸国の厳しい制裁が「非常に効率的で広範囲に及んでいるため」とし、「ロシア経済は数十年前の状況に後退するだろう」と述べている。その上、米国から携帯型の地対空ミサイル「スティンガー」などの新型兵器がウクライナに多数供与されており、ロシアは経済、軍事の両面で厳しい状況に追い込まれそうだ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナから国外に脱出した避難民は6月8日までに700万人を越えた。このうち、ポーランドへは369万人が入国し、ロシアへは104万人が移ったという。ウクライナの人口は2021年には4159万人だったので、総人口の約4分の1がウクライナを離れたことになる。
 
 ロシア軍とウクライナ軍による戦闘は当面、消耗戦が続き、長期化しそうな雲行きだ。このため、国連などで戦闘停止を巡る和平の動きが活発化すると見られるが、各国が自国の利害を超えて協調しなければ停戦に持ち込むのは難しそうだ。こういう時こそ、日本が米国、中国、欧米諸国の間に立って和平への努力をすべきではないだろうか。我が国の積極的な外交努力が、今後問われる事態になりそうだ。
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