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2022-05-25 21:49

西側諸国とそれ以外の世界の分断

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 2022年5月9日はロシアでは対ナチス・ドイツ戦争(大祖国戦争)勝利記念日(ベルリン陥落)だった。ウラジミール・プーティン大統領の演説に注目が集まったが、激しい言葉遣いはなかった。ウクライナ戦争については、西側諸国からの高度な武器供与を批判しながらも、対ナチス・ドイツ戦争、第二次世界大戦で連合諸国だったアメリカ、イギリス、フランス、中国に対する感謝の言葉もあった。抑制的な内容だった。
 
 ウクライナ戦争によって明らかになったのは、世界における深刻な分断である。この分断は「西側諸国とそれ以外の世界」というものだ。日本は先進諸国(民主政治体制)で構成される西側諸国に含まれている。西側諸国、特にアメリカが世界を主導するという構図が冷戦終結後に続いてきた訳だが、今回のウクライナ戦争によってこの構図が崩れつつあるということが明らかになった。
 
 国連の場でこれまで3回にわたりロシアを非難する決議が出されたが、これらに対して反対、棄権する国々も多く出た。それらの国々は「BRICs(ブリックス)」を中心とする、アジア、南米、中東、アフリカ諸地域にある非西側諸国だ。これらの国々はロシアと経済的、軍事的に緊密な関係を結んでおり、今回の戦争でそうした関係を崩したくないという意向を持っている。更に言えば、アメリカに対する不信感、アメリカが主導する西側諸国に対する不信感を持っている。世界の構造は変化している。昔であれば西側先進諸国の言うことは全てが正しく、これらの国々のようになりたいというのが当たり前だった。日本人である私も戦後の日本に生まれたことは幸運だったなぁと思うことは多かった。特に外国に行けばそう感じた。しかし、それが変化しつつあるのだ。
 
 私たちはウクライナ戦争を通じて、そのことを目撃している。現在の世界一の富豪であるイーロン・マスクは出生率を理由に日本がいずれ消滅するという発言を行った。世界の認識はこれである。戦後西側諸国の「優等生」であった日本の衰退・没落から消滅へという流れは世界の流れを象徴しているように感じられる。毛沢東の大戦略である「農村が都市を包囲する」という言葉を援用するならば「それ以外の世界が西側を包囲する」ということになり、西側諸国全体の衰退・没落が始まっていくのだろう。世界は大きく変化する。
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