国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2022-03-01 20:03

(連載1)ロシアの「核恫喝」を許してはならぬ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 ロシア・プーチン大統領の指令により、ロシア軍は2月24日、ウクライナ全土に対して国際法違反の軍事侵攻を開始した。しかし、その後、ウクライナ軍の抵抗が予想以上に強く、ロシア側の被害が拡大し、進軍の速度が当初の計画よりも遅れているとの海外情報も流れている。現に、2月27日ウクライナ国防省高官は、ロシア軍がウクライナ侵攻時の戦闘などで、兵士約4300人を失い、戦車146両、航空機27機、ヘリコプター26機を失ったと主張している(2月27日「ロイター通信」)。ロシア軍に誤算の可能性がある。そのためであろう、プーチン大統領は、2月27日ショイグ国防相、軍参謀総長と協議し、核戦力を含むロシア軍の戦力を特別態勢にするよう命令した。
 
 これはNATO(「北大西洋条約機構」)のロシアに対する経済制裁を含む攻撃的な姿勢に対抗するためとしているが、「核戦力」をちらつかせることで、制裁を強めた欧米を牽制する狙いが明らかである。「核恫喝」と言えよう。その最大の理由は、通常戦力においてロシア軍は、米軍やNATO軍に比べて著しく劣るからである。ロシア軍は2008年の「グルジア侵攻」で、欧米から提供された装備に比べ著しく劣っている事実が露呈した。そのため、ロシアは、米国とほぼ対等なのは核兵器だけなので、同分野の優位性を死守し誇示することに躍起となっているのである。
 
 「核恫喝」を恐れるがあまり、これに屈服し、ロシアの要求を受け入れることは、ロシア側の思うツボである。それは正義と秩序と国際法の死滅を意味する。したがって、米国およびNATOは、ロシアの「核恫喝」に対しては、恐れずに「核報復」を明示すべきである。
 
 なぜ、そうしなければならないのか。それは、今回のウクライナ侵攻で、プーチン大統領が、非核保有国との戦争において核戦力を誇示していることにある。プーチン大統領のいう「抑止力」がウクライナ領内で使われるものか、それとも欧州に対して向けられるのか、現段階では曖昧だが、これはあえてそうしているものであろうから、今回非核保有国に一方的に侵攻している段階でその領内に対して使うことを含むと仮定すれば、今までの核戦略とは一線を画することは明らかで、核戦略の逆行、巻戻りである。これが許容される場合に国際秩序に与える影響は甚大であり、このようなルール変更を容認することは許されない。よって、プーチン大統領がいずれの領土に対してであれ、実際に核兵器を使用した場合は、米国およびNATOがロシアに対して核報復を行うという姿勢を明確にプーチン大統領に伝えるべきである。(つづく)
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム