国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2021-09-13 22:25

(連載1)自民総裁選、立憲民主は成長戦略・安全保障を語れ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 9月3日の菅首相の退陣表明により、自民党総裁選が事実上スタートした。現時点では岸田文雄元外務大臣、高市早苗元総務大臣、河野太郎現ワクチン担当大臣が出馬表明し、三つ巴の様相である。岸田氏は自民党改革や新自由主義の是正である分配重視、所得倍増などを主張している。高市氏は「アベノミクス」の継承発展と、ITなど新技術の開発による経済成長戦略などを主張している。河野氏はテレワークによる東京一極集中是正、デジタル化推進による社会経済活動の効率化、再生エネ技術開発による経済成長戦略などを主張している。三氏とも、外交安全保障政策も重視しており、いずれも、コロナ後における日本の課題を見据えた具体的政策提言と言えよう。
 
 これに対して、野党第一党の立憲民主党は、コロナ禍での総裁選は政治空白を生み無責任だと批判し、直ちに臨時国会の開催を要求している。また、コロナ対策として、集中的な人流抑制や行動制限、低所得層への一人10万円給付、事業者への持続化給付金などを提言し、さらに、「枝野内閣」では官房長官を中心とするコロナ対策司令塔による一元的対策の推進などを主張し、総選挙での政権交代を目指している。
 
 しかし、立憲民主党は、コロナ感染症拡大で支持率が急落した菅首相による解散総選挙を強く望んでいたが、突然菅首相が退陣し状況が一変した。同党にとって菅退陣はまさに不測の事態である。そのうえ、立憲民主党の上記コロナ対策には新鮮味もインパクトもなく、政府自民党のコロナ対策と大差がない。さらに、立憲民主党が共産党を含む野党四党で合意した「共通政策」は、平和安全法制の廃止や、モリカケ・桜問題の再調査など後ろ向きのものが多く、コロナ後を見据えた日本の経済成長戦略がなく、国を守る確固たる安全保障政策もない。これでは、自民党の新総裁兼新首相が誰になっても到底対抗できないであろう。また、立憲民主党などの野党はコロナ対策として臨時国会の開催を強く要求するが、その主たる目的がコロナ対策よりも総選挙を有利にするための政府自民党攻撃であることが見透かされているため、政府自民党はこれに応じないのである。
 
 立憲民主党は、一人区で共産党と競合する約70の選挙区につき、共産党との選挙協力を鋭意進めていると報道されているが、共産党との「連立政権」は否定し、共産党に対して極めて自己本位で中途半端な態度をとっている。これは、もし共産党との「連立政権」を容認すれば、自民党などから待ってましたとばかり、「容共」の烙印を押され選挙で致命的打撃を受ける恐れがあるためである。しかし、一人区において、共産党と政策合意をし、共産党の選挙協力のおかげで当選した立憲民主党の議員は、当選後の国会活動や政策形成などにおいて、共産党に「忖度」し共産党の方針や政策に反対ができず、妥協することは否定できない。なぜなら、当選後において共産党に反対し対立すれば次回選挙で協力が得られず落選する恐れがあるからである。そのため、立憲民主党にとっては、共産党との選挙協力は、党内での共産党の影響力が拡大し、「両刃の剣」になる。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム