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2021-09-04 07:54

(連載1)’アフガン’は国内問題なのか-内政干渉の境界線

倉西 雅子 政治学者
 今般、アフガニスタンで発生したタリバンによる首都カブールの制圧に対して、日本国を含む世界各国の反応は、一先ずはアフガニスタンの内政問題ということのようです。半ば当事国とも言えるアメリカにあっても、同国からの撤兵の理由が、’アメリカが多大なコストを負担してまで外国の問題には介入しない’ということなのですから、その基本的スタンスは、アフガニスタンのことはアフガニスタンに任せる、ということなのでしょう。
 
 2001年9月に発生した9.11事件、すなわち、アルカイダの犯行とされた同時多発テロに始まるアメリカとアフガニスタンとの関係は、同組織を擁護していた当時のタリバン政権に対する開戦という、究極の’内政干渉’とも言える形で始まっております。国際社会もまた、テロ組織による攻撃を国際法における正当なる戦争事由として認め、国連にあって軍事力の行使を認めるための安保理決議が採択されると共に、NATOもまた結成以来はじめて条約の第5条に規定されていた集団的自衛権の発動を決定したのです。当時、タリバンは、グローバルなイスラム原理主義ネットワークと繋がるその国際性ゆえに、他国からの’内政干渉’を招いたと言えましょう。
 
 その一方で、今般のタリバンの首都奪還に際し、アメリカは、上述したように、タリバン政権の誕生は国内問題として捉えています。9.11事件から20年の月日が経過し、もはやアメリカ本土にあってテロ組織からの攻撃を受ける怖れは殆ど消えていますので、タリバンは、アフガニスタン国内における反政府武装勢力の一つとして位置づけられているのです。
 
 平和的な解決が望まれるものの、国際社会では、国内の勢力が武力を以って国家権力を争うケースは内乱と見なされ、一先ずは、その国の内政問題として扱われるからです。内政問題とされた以上、国連といった国際組織も諸外国も、内乱に対して介入することは原則としてご法度となります(もっとも現実には、この原則はしばしば破られますが…)。 (つづく)
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