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2007-09-20 10:54

『新・戦争論』を読んで思ったこと

北田徹矢  公務員
 伊藤憲一先生がさる9月14日付けのこの政策掲示板でご紹介されている『新・戦争論』を早速書店で買い求め、一読しました。伊藤先生が青山学院大学で教鞭を取っておられたとは、初めて知りました。ご本を購入するにあたり書店でいささか心理的な障壁を感じました。というのは、『戦争論』という本の題名がものものしいからです。私の地元は、観光業、医療業界そして建設業関係が主力産業であり、平和産業と対極にある戦争というイメージは、それ自体かなりの違和感が一般的にあるのです。

 『新・戦争論』の感想を以下述べさせていただきます。伊藤先生のお考えに基本的に賛成です。時代を遡って戦争という「社会現象」がなぜ起こったかを分析され、紛争と区別される戦争が姿を消しつつあるなかで、今後は紛争対策が重要になると説いておられるのは、大変分かりやすいものでした。ありがとうございます。ただ、先生のお考えの中で、世界システムが分裂状態から統一状態に向かうとされるなかで、世界統一化によって置き去りにされる地方がどうなるのか、もう少し詳しく教えていただきたいと思いました。卑近な例ですが、私の地元の市役所は対外的に市政府を名乗っており、地下街の案内板などにも中国人観光客向けに「市政府」と明記されています。市の考えを推測すると、外交的な接受の際に国をことさら持ち出す必要はないとの考えのようです。中国の経済界などの要人が市を訪問した際は、日本国旗は掲揚せず、市の旗と中国の赤い旗を両立して掲揚していたようでした。
                
 『新・戦争論』の最後の方に、世界の動向を踏まえた上で、これからの戦争がどうなっていくのかについて、貴重なご指摘があります。それは国家間の戦争が姿を消す一方で、紛争が新たな脅威として重大化するとのご指摘です。「テロとの戦い」は戦争ではなく、紛争であって、これは国際社会が力をあわせて対応しなければならない治安問題であるというものです。大変感銘を受けました。先生の理路整然としたお考えに改めて勉強になった思いです。ただし、以上を踏まえた私の読後感は、「困ったことになった」というものです。市民一人一人がテロとの戦いに中立や日和見を許されない社会になっていくという見通しだからです。

 以上、先生のご本を読んだ感想を述べましたが、「困ったことになった」と感じたということを先に述べた点について、一言釈明させてください。先生のお考えが「困ったこと」だという趣旨ではありません。地方と都市の格差の問題をお考えいただいた上で、以下の私の釈明を続けて読んでいただきたいと思います。

 卑近な例として私の住居近くの駅の構内には、警察庁の過激派取締まりのポスターが張ってあります。ものものしい過激派の姿が描かれております。たぶん、警察の視点からみれば、過激なテロをする危険のある人物や団体が、東京から逃げ延びるか又は捜査を逃れて潜伏しているかも知れないと思われているようです。そのほかの要因として、こちらでは高齢者がかなり居住しています。昼休みにもかなりの高齢者が出てきており、近くのレストランで姿を見かけます。テロとの戦いから「逃げてはいけない」という不戦時代の要請と、何かと若い人を詮索したがるであろう高齢者がかなりの比率を占めているという地方の実情を組み合わせると、地方はだんだんと住みづらくなるのではないかと危惧する次第なのです。こういう事情から、地方に住む者としては「困ったことになった」という感想を持った次第です。ちょっと、伊藤先生本来の問題意識からは逸脱している話かもしれませんが、そんな感想を持った読者もいたということで、ご記憶いただければ幸甚です。
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