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2021-07-08 21:08

(連載1)中国共産党、建党100周年、そして2022年へ

葛飾 西山 元教員・フリーライター
 7月1日、中国共産党は創立100周年を迎えた。陳独秀らによる党創立から100年経ち、世界第2位の経済力を有し、北京や上海がニューヨークやロンドン、パリ以上に近未来的な都市に変貌した中で、習近平総書記が中山服を身に着けていた姿はイメージ戦略が見事に発露されたものであった。革命の生き残りである鄧小平(Deng Xiaoping)までは中山服を日常でも身に着けていたが、21世紀に入ると滅多にお目にかかることがなかっただけに、その姿はひときわ目をひいた。言うまでもなくそれこそが狙いで、共産党最高指導部の中で革命の源流を受け継いで正統性を保持しているのは習近平ただ1人である、そのようなメッセージが感じられた。
 
 元防衛省情報分析官の松本修氏によるe-論壇「議論百出」の7月3日の論考「現代中国の盲点再論ー中国共産党創設100周年式典をめぐって」で、演説には強い政治主張は見られず、習近平政権の政治ショーであったと指摘されたのは、まさにそれであるのではなかろうか。かつて『儀式・政治・権力』(D・I・カーツァー著/小池和子訳 1989)で毛沢東を含め様々な政治指導者による儀式の様態を検討し、その政治メッセージの重要性が指摘されたが、今回の習近平総書記も、他者に対抗的立場を取ることを許さない、そして対抗的立場をとることは歴史の必然に逆らうことであるという警告を含めて印象づける演出であったと思う。
 
 さて来年2022年は第20期の新たな指導部を選出する年である。68歳定年を越える習近平の去就が注目される。ここで十中八九外れることを覚悟で大胆に予測してみたい。(1)68歳引退の禁を破って中央政治局常務委員に残る。(2)常務委員からは外れるが国家主席でありつづけ、国家元首としての立場を保持する。(3)党首脳部からも国家指導部からも外れ、かつての誰かのように党中央軍事委員会主席のポストに座り睨みを効かせつづける。大方、選択肢はこの3つになるかと思われる。
 
 私見では(3)ではないかと考えている、(1)は党内に余計な反発とその火種を作りかねないからである。習近平自身が在任中はいざ知らず、本当に政界を退いた後、その火種がどのように自分に降りかかってくるか分からない。この間、ことさらに腐敗撲滅で多くの政敵を葬ってきたから、なおさら逆流に対しては警戒心があるのではないか。大きな権力を手にしている今、わざわざ自ら導火線を用意することもなかろうと思う。(2)についてはまず無いと思う。もし選べばそれは愚策であると思う。国家主席に居座れば国家元首として最高位の地位に君臨し続けられるが、それは同時に大きな禍根を残す。新たな党総書記よりも国家主席が強い立場にいることは、国家主席>党総書記という図式を自ら作り出すことになり、1949年以来、営々と築き上げてきた国家に対する党の指導性を根幹から揺るがす悪しき前例を作ってしまう。党総書記が国家主席を兼ねることはあっても、党総書記が国家主席にお伺いを立てる図式は何としても人民には見せてはならない。(つづく)
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