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2021-07-01 23:51

(連載1)G7で明確になった中国への評価

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 先進七か国首脳会議、いわゆる「G7」がイギリスで行われた。G7は、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダで構成される政府間の政治フォーラムである。1998年からクリミア紛争による経済制裁までの期間はロシアも加盟していたので、「G8」と言われていたのであるが、クリミア紛争以降ロシアが招待されなくなったのはこの枠組の理念を表している。メンバーは世界最大のIMF先進国であり、最も裕福な自由民主主義国であり、グループは多元主義と代議制政府という共通の価値観に基づいて公式に組織されている。逆に言えば、「自由主義でも裕福でない」国は呼ばれないし、また、裕福であっても「自由民主主義国で多元主義と代議制政府という価値観が共有できない」国も招待されない。中華人民共和国がこのG7に招待されないのは、まさにそのような事情によるものである。メンバーはいずれも世界的な大国であり、経済、軍事、外交面で緊密な関係を保っている。
 
 日本では上記にように「先進七か国」というような言い方をするのであるが、実際には「旧西側諸国先進七か国」であり、自由主義と民主主義を守るということが大きな目的になっている。この会議は1973年に、いわゆる石油ショックで世界経済が沈滞ムードになった時に、臨時で5ヵ国、G7からイタリアとカナダを除いた5カ国の財務大臣が集まったのがその始まりであり、その後75年からイタリアとカナダが加盟している。日本では、2016年の伊勢志摩サミット(安倍内閣)や2008年の洞爺湖サミットがあったことを記憶している人もいるのではないか。専属の事務局があるわけではなく、各国議長国が持ち回りで、各国を招待し、そしてその時の喫緊の課題を話すことになっている。
 
 2020年6月、同年の開催国にあたるアメリカのトランプ大統領はG7の枠組みを「時代遅れだ」と批判し、ロシア、オーストラリア、インド、韓国を加えG10またはG11に拡大したい意向を示したが、新型コロナウイルスの流行を背景に「対中包囲網」という意識もあると見られる。ただし、G7全諸国の承認が必要であるのが条件でイギリスやカナダはロシアの参加に反対し、ロシアも中国排除の仕組みに意味がないと難色を示したことによって実現していない。そのG7が今年イギリス南西部コーンウォールで開催された。
 
 一年でそんなに大きく喫緊の課題が変わるわけではない。つまり、2020年にアメリカのトランプ前大統領が主唱した「コロナウイルス」と「中国」が今年も主な課題である。2020年のサミットと比べると、日本が安倍晋三首相から菅義偉首相に代わり、アメリカがトランプ大統領からバイデン大統領に代わった。リーダーの交代によって、G7の方向性が変わるのか、特に、トランプ大統領からバイデン大統領に変わったことによって何が変わるのかがもっと注目された。(つづく)
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